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ナズーリン! 幻想郷名物、ハリセンチョップ!(18)

「早苗、そろそろお暇(いとま)するよ」

ナズーリンが声をかける。

結局何も聞けなかった。

早苗はこうなることをなんとなく予想していたが、それでも気になることがあった。

「霊夢さん、最後に一つだけ教えてください」

「いいわよ」

「今日、たくさんのヒトが来ましたけど、皆さん、お友だちなんですか?」

「んー、違うと思うわね。 大体、友だちってどういうモノ?」

あっさり言い捨てた霊夢が質問を切り返す。

「えと、気が合って、苦しいときには助け合って、悲しいときには話を聞いてくれて、とにかく一緒にいると楽しくて、そんな存在だと思います」

「じゃあやっぱり、友だちっていないわね」

「それで良いんですか?」

「良いとか悪いの問題なの? なーに? 私と友だちになりたいの?」

「それは……多分違うと思います」

「アンタ、失礼なことをハッキリ言うわね」

片方の眉を吊り上げる霊夢。

早苗は俯いて考え込んでいる。

若干、気まずくなったところへナズーリンが辞去を申し出た。

「今日はどうだった?」

帰り道、早苗に問いかけるナズーリン。

「お話、全然聞けませんでした。時間がもったいなかったです」

やや恨みがましい目を指導員に向ける。

「いつも効率よく学べるとは限らないさ、これも勉強だ」

「でも、私、神奈子様と諏訪子様のためにも立派な巫女にならなければならないんです。

幻想郷で一番の巫女になりたいんです、そのための勉強ですから無駄にしたくないんです」

握りこぶしを見せるが、言葉にはそれほど強い意志を感じない。

「まぁ、明日もあるから頑張りたまえ、本日はこれにて終了だ、解散!」

早苗は、まだなにか言いたそうだったが、

「ありがとうございました、ナズーリン、せ、先生」

ぺこっとお辞儀をして山のほうへ飛び去っていった。

その姿を見送りながら考える。

今回は、霊夢のところへやってくる人妖たち、その接し方をみているだけでも得るモノはあると踏んでいた。

文や魔理沙に本日のことを仄めかしたのはナズーリンだった。

巫女としての心構え、そんなものは実際に仕える神と暮らす早苗の方が備わっているはずだ。

だが、あの生真面目な巫女は【巫女としての心構え】を学ぼうとするあまり、余裕が無くなってしまったようだ。

それに【友だち】へのこだわり。

早苗にとって【友だち】の概念は外の世界にいた時のものだろう。

(アチラではいなかったから幻想郷では欲しいのか、親しかったモノとの別れを後悔しているのか、それとも違う理由があるのか。

いずれにせよ本人が解決する問題だが、一度吐き出させたほうが良いだろう。

溜めすぎて時間がたってしまうと悪い形で噴出しそうな気がする。

でも、二柱にも言えずにいるようなことだから、どうやって吐き出させるかな)

本来ならこの手の厄介な役目は自身で行ってきたナズーリンだが、今回は無理だった。

初っ端に遊びすぎて警戒されてしまっている。失敗だった。

慧音に全てを話して頼る手もあるが、あの熱血教師は寝食を忘れ、真剣に取り組んでしまうだろう。

今回の指導のこと、座学が思いのほか順調なのは彼女の頑張りによっている。

これ以上負担をかけたくはない。

ナズーリンは考えた末、とっておきのカードを切ることにした。

「本日、私、ナズーリンは、急な仕事が入って指導ができない。

代わりの教官を紹介する」

「はーい、こんにちわー、因幡てゐでーす。【てゐ先生】って呼んでねー」

東風谷早苗は、自分に向かって小さく手を振る小さなウサギ妖怪に困惑していた。

指導三日目の朝、迷いの竹林でてゐを探しだしたナズーリン。

『どうしたの? こんな朝から飲むの?』

『いや、今日の飲み会はいつも通り夜からだ。』

『じゃあ、なに? 面倒ごと? 黙ってるってことは正解?』

ナズーリンは早苗に絡む状況と、てゐの役どころを説明した。

『あっきれたー、ナズリン、何やってんのよ?』

『だから、今回は私の立ち位置が微妙だから頼んでるんだろ?』

『知らないわよ、ナズリンが遊びすぎたせいじゃないの』

『そう言われると、返す言葉はないよ』

『調子に乗りすぎなのよ、たまには大失敗してうんと反省すればいいのよ』

『てーゐ、どうしてもダメかな』

『ワタシだって忙しいんだからね』

『そうだな、自分で何とかするよ』

『そうね、そうして』

『自分のうかつさが招いたことだ、仕方がない』

『そうね』

『正直、自信はないが、やれるところまでやってみるよ』

『……来週、夜雀の屋台で飲み放題食べ放題』

『……ありがとう、てーゐ』

『ああー! ワタシってもっと困ったヤツのはずなのに、アナタと一緒だとフォローばっかり!

知ってるでしょ? ワタシ、本来は面倒を起こす側なのよ? 解決する側じゃないんだからね!

間違ってるでしょ!? おかしいでしょ!? 誰のせい!? 何とか言いなさいよナズリン!』

一方的に罵るウサギに、黙って頷くしかないネズミだった。

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