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ナズーリン! 幻想郷名物、ハリセンチョップ!(21)

早苗とてゐの声が聞こえてくる。

縁側を選んだのは、この最後のやり取りを奥の間で待機しているナズーリンと慧音にも聞かせるためだった。

てゐさまとナズーリンせ、せんせいは【友だち】なんですか?

そういうことになっているね

大変失礼かと思いますが、友だちは選ぶべきだと思います

あははは、やっぱりー?

そうですよ、あんな意地悪でいい加減なヒト、いけませんよ

でも、あのコ、他に友だちいないからねー、ワタシが付き合ってやらないと

てゐさまはお優しいのですね

私、元いた世界ではともだちがいたんです

そうなの

学校の同級生でした、阿知波好笑(あちはこのえ)って言うんです

ふーん

私が東風谷(こちや)でしたから【あっち こっち】コンビなんて言われていました

うふふふ、面白いねー

はじめは名前の面白さだけで無理やりワンセット扱いされていたのが不満でした

イヤなコだったの?

いえ、つかみ所がないって言うか、何を考えているか分からないって言うか、取っ付きにくいコでした

どうやって友だちになったの?

偶然でした、休み時間になんとなくロボットアニメの主題歌を口ずさんでいたら、すごい勢いで食いついてきたんです

ロボットアニメ?

あ、あの、巨大機械人形の紙芝居って言えばいいんでしょうか?

んー、よくわかんないけど、その好笑(このえ)さんもそれが好きだったわけね?

そうなんです! 専門分野は少し違いましたが、同志に出会ったんです!

専門分野?

私は純粋にメカのフォルムや武器、技、合体シークエンスに萌えますが、好笑は操縦者の葛藤や不幸な生い立ちに萌える、ちょっと危ないコでした

ごめんね、わかんない

す、すいません、このあたりはどうでもいい話ですよね

でも、二人の楽しそうなやり取りはなんとなく想像できるよー

そうなんです! 好笑といると楽しいんです! そして優しいコなんです!

そうだったんだ

風を操る修行で何日も山にこもっていた時、泥だらけになりながら訪ねてきてくれたんです

へーすごいね

差し入れは絶版になっていた【アニメロボット大図鑑 全320体図解付き】でした!

うーん、そうなんだー

でも、好笑はそれを渡すと『頑張れよー』とだけ言ってすぐに帰っちゃいました

かわったコだね

正直、修行が厳しくて挫けそうだったんです、でも、往復何時間もの山道を私が一番元気になるものを持ってやってきてくれたんです

早苗ちゃんが嬉しいかったのならそれでいいと思うけど、不思議な差し入れねー

そして余計なことを言わずさっさと帰っちゃうところがなんとも好笑らしいんです!

好笑のことが好きな男の人がいたんです、でもその人が裕福な家庭で不自由なく生活しているって聞いたら、『翳のない男には興味がない』って振っちゃったんです! 結構ハンサムだったのに、おバカですよねー!

楽しかったのねー

はい、神社のおつとめや修行がありましたから忙しかったんですけど、好笑がいたから学校は楽しかったです

早苗ちゃん? どうしたの?

た、楽し、かったん、です

向こうに残りたかった?

いえ! 私は守矢の風祝として、神奈子様と諏訪子様とここで生きていくことを決めたんです! 後悔なんかしてません!

もう一度会いたいとは思わない?

ダメなんです! 今戻っても好笑にとって私は見知らぬヒトです! 神奈子様が術をかけたんです、そうしないと私は【超える】ことができなかったから!

そっかー、アナタは好笑さんを覚えていても【あっち】は忘れているのね

はい……好笑に『どちらさまですか?』なんて言われたら頭がおかしくなっちゃいます!

それじゃ早苗ちゃんはこのあと、どうするつもり?

わ、私も忘れるしかありません

そっかなー? 早苗ちゃんは好笑さんと友だちだったこと、後悔しているの? 思い出も捨てちゃうの?

え? 好笑の思い出、です、か? それは……そ、それは!

早苗ちゃん?

は、はい

泣いてもいいよ

え? なんでそんな

じゃあ泣き真似してみて、うわーんって

え、そんな、で、でも、あ、あの、……う、うわーん

上手、上手、今度はもうちょっと大きな声で

うわーん、うわーーん! はっ、ひっく、うううー、うわあああああああああああー!!

「これにて【特別補習講座】は全課程終了だ、【早苗どの】お疲れ様」

まだ腫れぼったい目をしている早苗の前に指導員三人が並んでいる。

代表でナズーリンが終了を宣言した。

あの後、慧音に付き添われ、顔を洗いに行った早苗。

ナズーリンがぐったりしているてゐを労う。

「てゐさま、お疲れ様だったね」

「……蹴っ飛ばすわよ」

「だが、見直したよ、キミの意外な一面を見せてもらった」

「もう二度とこんなことやらないからね! 昨日も言ったけど、ワタシ、【いいヒト】なんかじゃないんだからね!」

「わかったよ、私もミスをしないように気を付ける」

「どうだかねー」

「妖怪退治云々は早い段階で慧音どのが導いてくれたのでもはや心配は要らないだろう。

友だちのことにしても長く生きていればいつかできるだろう」

「よっぽど歪んで曲がっていなければね」

「それでも運がよければ出会えるさ、まして早苗は良いコだ、気の合うヤツと出会えるよ」

「そうね、きっとそうね」

最凶コンビはゆるっと笑いあった。

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