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ナズーリン! バカップルNo.1!(1)

「次のもんだいです!」

氷の妖精が大きな声で告げる。

「【える】は【える】でも【か】がつく【える】はなーんだ?」

単純な問題だ、いや、問題にもなっていない。

ナズーリンはこの場のルールにのっとり、のろのろと手を上げる。

「おーっと、ナズーリン、分かったの? では答えをどーぞ」

氷精チルノがネズミ妖怪をびしっと指差す。

「【カエル】だろ?」

「ぶっぶー、ちがいまーす。 ざんねんでしたー」

「はい! はーい!」

日の光の妖精が元気に手を上げる。

「はい、サニー、どーぞ」

「答えは【かんがえる】!」

「せいかーい!!」

なんじゃそりゃ。

「では、次のもんだいでーす!」

チルノの前にはナズーリンをはじめ妖精たちが十人ほど。

その後ろに霧雨魔理沙が寝そべってニヤニヤしながら【なぞなぞ大会】を眺めている。

「赤で白で黒くて、黒で赤で白くて、白で黒で赤いもの、なーんだ?」

ナズーリンは考える。

チルノの知識範囲で赤白と言えば【博麗霊夢】だろうし、特徴的な長い黒髪を含めれば、該当するのは間違いなく彼女だろう。

だが、何故、色合いを何度も繰り返すのか。

(前にこんな意地悪クイズを聞いたことがあるんだが、あまりにくだらなくて記憶にとどめていなかったな。

んー、この傾向、雰囲気、なんだったかな……)

星の光の妖精が答える。

「踊っている霊夢さん!」

「うーん! スター、惜しいね! 正解は、【酔っ払って神社の階段から転がり落ちているれいむ】でしたー!」

そうだ、これはエレファント・ジョーク(意地悪クイズの一種)の類だ。

解答が複数あるので主導権が相手にある限り、いいように振り回される。

(なんでこんなことになったんだろう?)

チルノ主催のなぞなぞ大会にいつの間にか参加しているナズーリンが自問する。

命蓮寺の縁日を前に、氷精チルノの力を使って【アイスキャンディー】の出店をやるべく話を持ってきたのだが、

『なぞなぞで勝負だよ!』

いつの間にかそんな話になってしまった。

たまたま居合わせた霧雨魔理沙は状況を理解しながらも手を貸すつもりはないようだった。

まぁいいかと、自然体で参加してしまったナズーリン。

妖精相手なのだから初っ端で威圧して主導権を握るなり、煽て倒すなり、やり方はあったはずだが、自分の知力に自信のあった小さな賢将は余裕を見せすぎた。

最近、妖精たちの間でブームになっている【意地悪なぞなぞ】の嵐の中、翻弄されっぱなしだった。

見た目が小さなナズーリンは一旦ナメられるとなかなか挽回できない。

特に理屈で反撃できない相手は少々苦手だった。

「ぶぶーっ」

チルノが実に楽しそうに告げる。

ナズーリンはまたしても引っかかった。

「さっきから言っているその『ぶぶーっ』ってなんだい?」

「早苗が教えてくれたんだよ、間違えたらこう言うんだって」

「なんだそれは。バカバカしい」

「あー、バカって言ったら、言った数だけソイツがバカになっていくんだよ!」

どこかで聞いたようなことを得意げに言う。

「ケネがそー言ってたもん」

「ケネって、慧音先生のことか?」

「そーだよ、寺子屋の先生だよ。

ケネの話を聞くと、少し頭が良くなるんだよ。

アンタも聞くといいわね」

「慧音先生のお話か、いや、確かにそうだね、タメになるよな」

魔理沙は草むらに寝そべり、肘立て枕のままニヤニヤしている。

このなぞなぞブームを仕組んだのはどうやら彼女らしい。

チルノに問題を仕込んだのも彼女だろう、ならばいささか面倒だ。

真っ向から目線を逸らさず自信満々でネズミ妖怪と対する氷の妖精。

ナズーリンにとってはなんだか新鮮な視線だった。

「ふーん、ナズーリンはなぞなぞが苦手なんだね?

あたいは最強だからね、弱いものいじめはしないんだよ。

だから頭が弱いナズーリンには簡単な問題を出してあげる」

「そりゃどうも」

(『頭が弱いナズーリン』か、これも新鮮だな。実に新鮮だ)

心で苦笑する。

「咲夜がナイフを投げようとしています。

でもこのナイフは魔法がかかっていて、いちめーとるしか飛びません。

ところが咲夜の投げたナイフは、じゅうめーとる先の的に当たりました。

なぜでしょう?」

ナズーリンはようやくこのなぞなぞの質が飲み込めてきた。

「そのナイフの長さが9メートルあったからだね」

9メートルのナイフをブン投げる咲夜の姿はシュールだが。

「せいかーい! やればできるじゃない! ナズーリン! それでいいんだよ」

「はは、ありがとう」

それまで腹を抱えて笑っていた魔理沙が起き上がってナズーリンに歩み寄る。

「いつぞやの借りを少しだけ返すぜ」

以前、パワーアップを希望した魔理沙にナズーリンは具体的な対策をいくつか提示したことがあった。

その提案は十分納得のいくものだったから素直に取り組んだ魔理沙。

それぞれ苦労はしたが、効果は期待以上だった。

結果、魔理沙は格段に強くなった。

博麗の巫女がよほどコンディションの良い時でないと対戦しないくらいに。

だが、ひねくれ魔女は素直に礼を言えなかった。

それでも根が律儀なこの娘は小生意気なネズミに、いつか【借り】を返すのだ、と機会をうかがっていた。

妖精たちに不思議と相性のよい魔理沙。

チルノに話しかける。

『オマエの力でスゴいことができるらしいぜ』

『氷菓子っていうんだ』

『どうやら果物やジュースを凍らせて作るお菓子らしいぜ』

『モノを凍らせる能力が必要なんだ』

『凍らせ方が難しいらしくてよっぽどスゴい能力じゃないと美味しくできないんだと』

『でも、それを食べた連中は、あまりの旨さにビックリするだろうな』

『そして作ったヤツをとーっても尊敬するに違いない』

『あー、ワタシも尊敬されたいなー、オマエの力が羨ましいぜ』

単純で分かりやすく、かつ決定的なウソは無い。

チルノは魔理沙が一言発するたびに引き込まれていく。

「あたいの力が必要ってことね? いいわ、偉大なあたいの力を貸してあげるわ!」

すっかり乗せられた氷精チルノ、アイスキャンディー作りへの協力を承諾した。

「ナズーリン! なぞなぞ勝負はあたいの勝ちだけど、特別に力を貸してあげるわ!

頭の弱いアンタはもっとべんきょーしてきなさいよ、いつでもちょーせんは受けてあげる」

勝者の慈悲と余裕を持ってナズーリンを見下す。

その場にいた多くの妖精たちは【頭の弱いナズーリン】を囃す。

『あったまのよわーいナズーーリン♪ もーっとべんきょーしなくちゃねー♪』

即興で囃し歌ができてしまった。

このあたりは妖精ならではのノリと能力か。

月の光の妖精だけが『そうかなー? 本当にそうなのかなー?』と首を傾げていた。

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