紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! バカップルNo.1!(2)

 

「気にするなよ、誰でも調子の悪い時はあるさ」

「今回は礼を言うよ」

「おや? 随分しおらしいな、気持ちが悪いぜ」

ナズーリンと二人きりになった魔理沙、賢将をもう少しからかってやろうと話を振ったのに乗ってこない。

「なあ、ホントどうしたんだよ? オマエらしくないぜ?」

覗き込む魔理沙。

決して口には出さないが、傍若無人な若い魔女は隣を歩くネズミの賢将に一目も二目も置いている。

「妖精相手に真剣になるなよ、な?」

からかおうとした相手を慰めているトラブル魔女。

実は世話焼きで気ぃ遣いなのだ。

「ん? ああ、すまない。少し考え事をしていただけだよ。

気にしないでくれたまえ」

一方のネズミは本当に考え事をしていた。

二つのことについて。

一つは妖精たちのこと。

ナズーリンはこれまで妖精とはあまり接してこなかった。

妖精は自然の具現であり、【個体】として認識することが少なかったからだ。

今日のチルノたちを見ると、幻想郷の妖精は【あちら】より個性が強い。

(それとも【あちら】では個性的な妖精が住み辛くなったから【こちら】にきたのか。

いずれにせよ、認識を改める必要があるな)

もう一つは【頭が弱い】と言われたこと。

妖精の言うこととだし、妖精からどう思われようと大して気にはならないが、【頭が弱い】とは初めて言われた気がする。

自分の知力が傑出しているわけではないことは分かっている。

寅丸星のため、【賢将】を演じる努力をしてきたに過ぎない。

それなりに結果を出してきた自分の頭は弱くはないと思っている。

だが、実際はどうだったのだろうか。

心配顔で『寺まで送るぜ』と言う魔理沙の申し出を固辞し、一人歩きしながら考え続ける。

(頭の弱いナズーリン、か……)

これまで判断を迫られた数々の状況を思い起こす。

そのときは最善と信じた判断も今にして思えば最善手ではなかったこともある。

いまだに悔やまれるのは何と言ってもあの時。

聖たちと行かせてやった方が良かったのかも知れない。

いや、聖たちを救う方策もあったはずだ。

結果的には万々歳になった。

それは、星をはじめ、聖たちの頑張りと、霊夢、魔理沙たちという偶然の因子、間接的には八坂の神の力。

これらが奇跡的に組み合わさったに過ぎない。

【なにかの縁で】【見えない力に導かれて】

そう考えるのは容易いが、それなら自分は何のために苦労するのか。

その苦労も【賢将】と呼ばれるにはあまりにお粗末な備えだったし、出たとこ勝負の仕事だった。

(いやはや、まいったな。こんなに考えが浅くて頭の弱いものが賢将とは、実に片腹痛い)

若干、自虐的な気分に浸り始めたナズーリン。

寺に到着した。

入り口のだいぶ手前に寅丸星が立っていた。

まるで従者の帰りを待ちわびていたかのように。

「ナズーリン? どうしたんですか?」

珍しく上の空な従者に寅丸星が声をかける。

「まぁ、いろいろあってね。少々自信が揺らいでいる」

「どうしちゃったんですか?

呆れるほど傲岸不遜で、憎らしいほど自信満々なナズーリンが」

「ご主人が私をどう見ているかよーく分かったよ」

「うふふ、冗談ですよ」

ニコニコしている寅丸星。

このヒトに仕えるよう命じられて長い年月が過ぎていた。

自分は本当にこのヒトの役に立てているのだろうか。

全力を尽くしてきたつもりだが、そもそもが力不足だったのではないか。

このヒトの従者として自分はふさわしいのだろうか。

反省が行き過ぎ、マイナススパイラルに陥り始めている。

「どうやら私は頭が弱いらしい」

「はあ?」

「これまでを振り返ると確かに頭の悪いことをたくさんしてきたさ。

それもここ一番の大事な時にね。

うん、頭が弱いね、間違いなく」

寅丸はきょとんとしている。

その顔を見て、ナズーリンも詮無いことを言ってしまったと後悔する。

まったく、いまさらこんなこと言って何になるのか。

ホント、頭が弱い。

「私が知っている限り、この世で一番賢いのはナズーリンですけど?」

(まぁ、ご主人ならそう言ってくれるだろうとは思ったけど)

「でも、たまに頭が弱いのかなーって思うときはありますね」

(え!? そ、そうなの!?)

「えっちなことを考えて、なにかしようとするときは『このヒト、なんだかなー』って思いますけど」

(あ、ああ、そういうことか。むむむぅ、少し冷静に攻めなければならないと言うことか……)

「ねぇ、ナズ? 元気を出してくださいな。

アナタはこの世で一番賢く、強く、優しく、素敵なヒトですよ。

私が保証いたします!

私の太鼓判じゃ心もとないと思いますけど」

そう言って慈笑を満面に浮かべる。

その笑顔にナズーリンの心の錆が溶けていく。

(まいったね、私の懊悩などホントちっぽけだなぁ)

外見の美しさ、そんなものを超越した美しく気高く、強い心。

いつでも優しい主人であり、素敵な恋人。

やっぱり力の限りこのヒトを支えていこう。

(ふふふ、やっぱりこのヒトには敵わないな、大好き)

あれほど悩んでいたナズーリンだが、あっと言う間に普段のテンションに戻ってしまった。

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