紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! バカップルNo.1!(5)

氷菓子を堪能した紅魔館一行が縁日の様子を見ている。

これからどうやって楽しもうか。

当主とその妹はあちこち指さしながら楽しそうに言葉を交わしている。

これまでずっと無口なパチュリー、きょろきょろと落ち着きがない。

だが、誰も『どうしたのか』と聞かない。

聞かなくとも分かる。

引きこもり魔女が唯一自分から積極的に関わろうとする相手、姫海棠はたてを探しているのだ。

命蓮寺の縁日、寺に縁の深いはたてがいないはずはない。

先週来館したときも『楽しみですねー』と言っていたのだから。

どこかにいるはず。

このようなヒト混みに好んで出向くはずもない日陰少女だが、今夜に限っては、ある計画を胸に秘め、断固たる決意を持って望んでいた。

今宵は念のため出発前に入浴している。

外出着も少しばかり気合いを入れている。

いつもと変わらないおネグリワンピに見えるが、外出着なのである。

おしゃれ着なのである。

勝負服、のようなものなのである。

終夏の夜を意識し、ほんの少し青が入った白いワンピース、ややフリル多め。

かの中国、清代の小説【紅楼夢】でも紹介された【月白色】、別名ムーンライトブルー。

一番好きな色。

外側はこれでOK、だが、パチュリーさん、勝負モノの下着なんぞは持っていなかった。

そもそもそんなモンが必要な場面、想定したことがなかったんだから。

いや、そもそも今夜、出番があるかどうか、甚だ疑わしい、多分100パー無いだろう、ああ残念!

要らぬ心配とはこのことだが、恋する乙女のこだわりなのだ、備えなのだ、覚悟なのだ、分かってやって欲しい。

しかし、手持ちの下着はどれもこれも野暮ったい。

カバー率重視、つまりは総じてデカくて安心できる仕様、実用面では文句無しだったが、【見せる】となれば話は別。

結局のところ、これだ! と言う決定打を放てるスマッシュブルな下着はありゃーせんのだった。

お出かけ直前まで決まらなかった。

『ならばいっそ、なにもつけずに臨む!? バカには見えないセクシー下着ってことで!』

テンパったパチュリーの明らかに脱線、転覆した決断に、着替えを手伝っていた使い魔が慌てる。

『パ、パチュリーさま! 落ち着いてください!

とりあえず今日のところは穿いていきましょう!

なにも穿かないってのは、どんな展開においてもドン引きバッドエンドになります!

こ、この薄緑色の上下にしましょう! ね!? ね!?

ショーツの股がみの深さは丸っきりお子様仕様ですが、上はクオーターカップですから、ちったぁアッピールできますし、淡い白青のワンピースと併せると、万が一剥かれて『いやーん、あんまり見ないでー』の時に全体的に涼しげでなんとなくボンヤリいい感じに見えますよ!

素敵に見えます! セクシーです! 美人さんです!

きっと、おおよそ、たぶん、だいたい、だいじょーぶです!!』

『そ、そうかしら?』

『そうです! パチュリーさまは、痩せているのに胸だけは無駄にたっぷりありますし、色白ですし、お顔も標準よりはほんの少しはましな部類です!

ひねくれてるうえに面倒くさい難儀でジコチューな性格を差し引いても、総合的にはギリッギリ中の上です!

自信を持ってください!

あ、でも、頭に乗っちゃダメですよ?

もともとはホント大したモンじゃないんですから。

中身は誰もが後悔するほどロクでもないんですから。

勘違いしていい気になったら一生モノの恥をかきますからね!

いいですか!? ほどほどが肝心ですよ!

結局何が言いたいかつーと、つまり、外見をあまり飾りたてなくともOKだと言うことです!

つか、飾りにくいんです! 手が付けにくいんです! 素材的にクセが強すぎるんです!

一か八か素のまんま、病的不思議ちゃん系を全面に押し出して【だが、それがいい】それが良いんだ、って言う激レア奇特な変わりモノを捕まえるしかないんです!

チャンスは少ないんですから、もたもたしてちゃダメですよ!!』

『……ねえ、随分な言い方じゃない?』

『なーにを仰います!! パチュリーさまに奇跡的に巡ってきた、恋のチャンス!

おそらく最初で最後のチャーンス!

私は全力で応援しているのです!』

『そ、そうなの? 応援してくれるの?』

『もっちろんです!!』

『アナタを言うこと、信じていいの?』

『Exactly!!!!!!』

スタンド使いの某イカサマ師の弟のように最敬礼で応える使い魔。

いつも自分のために励んでくれているし、助言もしてくれる。

慇懃で忠実なのだが、たまにスんゴいバカにされているように感じるのは気のせいなのだろうか?

パチュリーはこれまで身なりを気にしなかった。

埃っぽいとか、カビ臭いとか言われても気にならなかった。

実は風呂に入るのも、気が向いたときだけだったりする。

だって、新陳代謝も抑制できるから垢も出ないし、外出しないから汚れないし、なにより時間が惜しかったし。

気がついたのはいつだったか。

はたてはいつも身ぎれいだった。

外を飛び回って汚れるはずなのに、何故いつも小ざっぱりしているのだろう?

空を飛ぶと結構汚れがつくものだ。

でも、図書館を訪れるはたてはいつも小ぎれいにしていた。

本人に聞くのは何となく気が引けたので、別の日、通りがかった門番に聞いてみた。

『こちらに来るときには必ず身を清めているんでしょうね。

私も妖怪ですから匂いで分かりますよ。

湯浴みをして、洗いたての服に着替えているはずです。

パチュリー様にお目にかかるときはそれなりに身支度をしていますね。

まー、好きなヒト、尊敬するヒトに会うことが分かっているならできる限りキレイにしますよねー、女ですから当たり前ですけど』

(えええー!? そ、そうなのー!?)

愕然となったパチュリー。

自分はこれまで全く気にしていなかった。

急に自分の身なりが気になり始めた。

今も三日、同じ服を着ている。

袖口の臭いをかいでみる。

お世辞にも良い香りとは言えない。

あせった。

今までこんなナリではたてに接していたのか。

【好きなヒトに会うことが分かっている】のになんてザマだ。

恋物語もたくさん読んできたはずだが、完全に他人事だった。

しかし、今は当事者、気持ちの上ではヒロイン真っ最中、なのにこれじゃダメすぎる。

(言われるまで気が付かないなんて、ワタシ、どうなっての?

こ、こんなの女じゃない、いえ、それ以前にヒトとしてアウトなんだわ)

それから毎日入浴するようになった、ガッツ入れて体中洗った。

こまめに着替えるようになった。

今までより増えた洗濯物、なのにメイド長は文句を言うどころか、なんだか嬉しそうだった。

『問題ございません、むしろこれで宜しいのですよ』

なんで嬉しそうなのか不思議。

ともかく大進歩、大躍進だ。

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