紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! バカップルNo.1!(9)

霧雨魔理沙がアリス・マーガトロイドを伴って歩いている。

恋色魔法使いが誰と一緒なのか、密かに注目されていたりする。

【色男】な魔砲使い、最近は人形遣いオンリーだった。

アリスも十分に目を惹く容姿であるから、煌めきをまとった魔理沙と並んでも引けを取らない。

この二人は道行く人妖を当たり前のように振り返らせる。

輪投げの出店に足を止める。

壮年の男性が口上をまくし立てながら客を呼び込んで輪っかを投げさせている。

屋台の半分は里の人間が店頭に立っている。

これは最初からの取り決め、人妖共同の運営を希望した聖白蓮の発案。

可愛らしいぬいぐるみ、ちょっと安っぽいアクセサリーの類、おもちゃの短剣、ビー玉・ベーゴマの詰め合わせ。

子供が欲しがる品々が丸い台座の上で手招きしている。

次々と輪が放られる。

子供自身が投げることがほとんどだが、せがまれた親が放ることもある。

フィールドの真ん中あたりに鎮座し【特賞】に相当するらしいのは際だって精巧にできた愛らしい人形。

三体あった。

縁日の景品にしては場違いなほど豪華すぎた。

本当によくできている。

当たり前だ。

アリス・マーガトロイドが、今回の縁日に供出した手製の人形なのだから。

娘たちがなけなしの小遣いをはたいて必死に輪を放る。

あの人形、欲しい! 絶対欲しい!

でも取れない。

店番の男性に煽られ、子供たちはさらに小遣いをつぎ込む。

あ、惜しい。台座の円筒に引っかかって落ちてこない。

あああーー、少女の悲鳴のような無念の声。

「なあ、アリス、あの台座、輪っかより大きいんじゃないか?

あれじゃ、絶対取れないぜ?」

不審げな魔理沙の指摘に子供たちが持っている輪と台座を見比べるアリス。

アリスの目には台座と輪の内径がほとんど同じと見て取れる。

対象物との距離、大きさの比率、幻想郷最高のスナイパーが見誤るはずがない。

これは無理だ。

命蓮寺の縁日、営利目的ではないはずだから、この男性のちょっとした意地悪なのだろう。

だが、ちょっとやりすぎだ、可哀想だ。

義憤にかられ、文句を言おうとした魔理沙を片手で制す。

「おじさん、私にもやらせてくれる?」

アリスの申し出に壮年男性がニヤっと答える。

「おや、アリスさん、構わないが、魔法は無しにしてくださいよ」

「こんなもの、魔法を使うまでもないわね」

「アリスさん? 分かっているとは思うが、輪っかが少しでも引っかかっていたらダメだからね」

この言葉で確信できた。

ぴったり同じ位なのだろう。

そして文句を付けても実際に輪をくぐらせて【不可能ではない】と言うつもりだろう。

小銭と投げ輪を交換し、魔理沙に問いかける。

「魔理沙、どれが欲しい?」

「別に欲しいって訳じゃ……あ、まぁ、うん、あの真ん中のかな」

作った本人に向かって『欲しくない』とは言いにくい。

輪の作りはしっかりしているようだ。

輪っかの一つを人差し指にかけ、くるくるくるくると回す。

魔理沙はアリスが余計な格好付けをしない質だと知っているので、この所作の意味が分からなかった。

まだ回している。

人差し指と輪っかの動きが目で追えなくなってきた。

【シィーー】と、小さな高速回転音。

そして【チャクラム】のように、ぷんっと放った。

ふわーっと浮き上がり、その高速回転を維持したまま、ゆっくり降りてくる。

そして真ん中にいた人形の台座に【スポッ】とはまった。

「そんな! そんなバカな!」

店番の驚愕。

あの回転は、遠心力を使ってほんの少し投げ輪の【径】を広げるためだったのか。

でも、こんな精巧なコントロール、ありえない。

でも、演者はアリス・マーガトロイドだった、不可能を可能にする【器用さ】を身に着けた魔法使い。

超微細制御を難なくこなす【奇跡の紡ぎ手】だった。

「そうね、バカなことだわ。

これは洒落で結構よ、人形はいらないわ。

ただ、台座を取り替えてくれればいいわ、もっと小さい台座にしてあげてね」

叫びだしそうな観客の機先を制してアリスが言う。

「は!? へ!? あああ、お、お、恐れ入りましたー!!」

店番が平伏すと共に子供達の大歓声。

「スゴイぜ! アリス! スゴイぜ! あーもう! なんてヤツだ! カッコ良すぎだ!」

帽子を取って思い切り抱きついてきた魔理沙。

やんやの大喝采。

しかし、アリスにとっては数多の喝采より魔理沙の賞賛が心地よい。

ぎゅうぎゅうと抱きしめてくるいい匂いの物体に圧倒されていた。

照れ隠しに、残ったもう一つの投げ輪を無造作に放る、オモチャの指輪、二個組をゲット。

「それはいただいていくわ、かまわないでしょ?」

安っぽい金色のメッキの指輪本体にそれぞれ黒いガラス玉と青いガラス玉がはめ込まれている。

抱擁をといた魔理沙が手に取る。

「二つあるから半分個にしようぜ。

金色に黒はワタシみたいだなー、そんで金色に青はアリスだなー」

二つの指輪をしげしげと見つめる魔理沙。

「なあ、アリス、指、出して」

「はめてくれるの?」

アリスはちょっと緊張しながら左手を出す。

そして薬指をほんの少し浮かせていたのは自分の意思とは別の力だと思いたい。

指先をつかまれて少しドキドキ。

「お、ちょうどいいな、アリスの指は細いなぁ」

薬指には金に黒の指輪。

「こ、こっちはアナタのじゃなかったの?」

「だからこそアリスに持っていて欲しいんだ、私は金に青の方を持っていたいぜ」

そう言ってニッと笑う。

ちくしょう、ちくしょう、素敵。

こんなオモチャの指輪なのに、なんだか運命を感じちゃう。

「べ、別にどちらでも構わないわ、今夜だけのお遊びだしね」

そう言いながらも、後にアリスの宝箱に大事に、大事にしまわれることになる。

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