紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

厄神さまはキュウリが嫌い(4)

「私のことはこのくらいで良いだろう?

親方、もっと他に言いたい事があるんじゃないのかい?」

このヒトはお見通しだ。

それにこれだけ【想う】ことに誠実なのだから、相談にも真剣に乗ってくれるだろう。

(うん、やっぱりダンナに話してみよう!)

にとりは覚悟を決めた。

「ダンナは厄神さまを知ってる?」

「鍵山雛、だったよね?

会ったことはないが遠くから見かけたことはあるよ。

麗しい女神さまだよね」

「そうでしょー! キレイだよねー!」

「話では元流し雛だそうだね、かなり腕の良い人形師だったのだろう。

人形は顔が命とも言うから」

「ところがキレイなのは顔だけじゃないんだなー、これが」

「ほう? 顔以外というならどこらへんのことをいっているのかね?

そもそもなんで親方が知っているんだい?」

「え!? いや、その……たまたま見かけたことがある、っていうか、その、えっと」

ごにょごにょ。

「はっきり言いたまえよ。 たまたまだと? 何があったんだい?

ここだけの話にしておくから、ね? 言ってみたまえよ、ね?」

にやっと笑うネズミのダンナ。

詰め寄られたにとりは、ぽつぽつと話し始める。

一月くらい前のことなんだけど、仕事帰りの厄神さまのあとをなんとなくついていったの

ふーん、なんとなくねぇ

集めた厄をどこに貯めているのか興味があったんだ

ふーん、ホントは?

厄神さまがどんなところに住んでるか知りたかったから、って! ちょっと待ってよ!

まぁ、いい、気づかれなかったのかい?

気づかれなかったと思うよ、たまたま光学迷彩スーツを着ていたから

ふーん、たまたまねぇ

だって、気を遣わせちゃいけないでしょ?

まぁ、そういうことにしておくか

お家は山の中腹、入り組んだ小径を抜けたトコロにある小さいお堂だったんだ

ふーん、それで?

厄神さまが無事についたから、これで良しって思ったんだけど……

思ったんだけど?

なんとなくそこで待ってたの、何かを期待していたわけじゃないんだけど

ふーん、なんとなくねぇ

そしたら浴衣に着替えた厄神さまが表に出てきたの、飾りをはずし、髪もほどいていたからなんだか別人みたいだった

待っていた甲斐があったね

どこかへ行くみたいだから後をついていったの、だって、危険があってはいけないから

ふーん、まぁいいや、それでどこへ?

川だったの

予想の範囲だね

水が貯まっているところ、んー、つまり淵だったの

展開が読めてきたぞ、そして?

そのー、えーと、……浴衣を脱ぎ始めたの

まぁ、当然そうなるな

見てはいけないって、いけないことだと分かっていたの

ふんふん、そりゃそうだ

でも、得体の知れない暗黒の力がワタシを支配しようとしたの

ほうほう、暗黒の力ねぇ

身動きもできず、目もそらせず、とても苦しかった

ふんふん、そりゃ大変だったね

そのうちに飛び出して抱きつきたいって暗黒の衝動が湧き上がってきたんだけど必死で戦ったの

ふんふん、お疲れさん

苦しい戦いだったけどワタシは勝ったの、見ているだけに抑えたの

ほう、たいしたもんだ、と言っておこう

弱い月明かりだったけど、透き通るように白い肌はスベスベに見えたの

距離があったろうに、親方は目が良いんだな

目は普通だよ、たまたまスターライトスコープ仕様の双眼鏡を持っていたから

……たまたまか、ツッコむ気にもなれないな、で?

淵に入って水浴びを始めちゃったの

ほうほう、いわゆる風呂覗きだね

濡れた髪が少し濃い色に見えて、白い肌にはじかれた水がキラキラしていて、キレイだったぁ

覗きが犯罪だって知っているかい?

おっぱいはそんなには大きくはなかったけど、腰はキュッと細くて、お尻は結構ムッチリだった

完全に開き直っているね?

毛が生えてなかったから、やや高めの土手もスジもはっきり見えちゃったの

おい! さすがにそれはマズいぞ? かなりマズい!

その時、この感動をどうにかして残したいって思ったの

親方、大丈夫か? かなり危ないんだが

たまたま夜間撮影用の超高感度カメラを持っていたの

待てーい! それはダメだ! それをやったらダメだ!

でも、それはやっぱりいけないことだと気づいたの、犯罪だなって

それまでも十分犯罪だって分かっているのかね?

その夜はおとなしく帰ったが、その夜から厄神さまのことが頭から離れなくなったと河城にとりは告白した。

「親方、今度から【エロガッパ親方】と呼ぶことにするよ」

「え!? なんで? これは純粋な好奇心だよ!」

「そこまで周到に準備していた確信犯が純粋もヘッタクレもない、これは犯罪だよ、は・ん・ざ・い」

自分のことをかなり高い棚に上げているナズーリン。

「え!? でも、ほんの出来心なんだよ?」

「ほう、認めてしまったね?」

「あぅ……あの、ごめんなさい! もうしません!」

「私に謝っても仕方ないだろう」

腕組みしたまま、ふーっと息を吐く覗きのグランドマスター(現在休業中)。

「まぁ、覗きの事実をどうするかは置いておいて、親方が言いたいのは別のことなんだろ?」

糾弾の手を緩め、柔らかく問いかける。

「そ、そう! 裸のことじゃなくて、ダンナに言いたいのは一目惚れってあるのかなってことなの!」

「全裸覗きから始まる純愛か、うーむ、紛ごうかた無き変態だ。

親方、なかなかやるな、さすがだね」

「ねぇ! やめてよ! 変態って言わないでよ!」

「親方の変態性もこの際置いておくとして」

「変態は確定なの!?」

にとりの目が潤んできた。

「全裸に一目惚れか、顔を見ただけで惚れることがあるんだから、まぁ、あるんだろうね」

「だから! 裸のことじゃなくて!

確かにそれがきっかけかもしれないけど、まだホントに好きなのかどうかも分からないよ。

まだちゃんと話をしたこともないし、それで好きだなんて言えるか分からないし……」

(気になる存在から好意の対象へ、か。

きっかけはともかく、すでに好意へ昇華しているのは間違いないな。

だが、エロいくせに変に生真面目なこの娘は厄神さまとの交流を通してからで無いと自分の気持ちに納得したくないのか。

偏屈なのか、理屈っぽいのか、まぁ、好感は持てるけどね)

ナズーリンは目の前であたおたしている純情助平な河童娘を優しく見つめた。

「厄神さまの裸体か…… 明るいところで見たいとは思わないかね?」

「見たい!」

間髪入らない返答。

「……あ、そ、そうじゃなくて! その、裸のことじゃなくて!」

このカッパちゃん、正直すぎる。

「そしてキレイな肌を愛でてみたいと」

「そ、そんなことまで考えてないよー!」

「しかし、いずれは肌を合わせて、あんな事やこんな事をと」

「だから、まだ早いんだってばー!」

「……まだ、と言ったね?」

「はうっ!」

(しまった! ダンナの目、なんだか冷たいよー、これって、軽蔑されちゃったんだよね、ううっ言わなきゃ良かった)

いつのまにかナズーリンの右手が差し出されている。

「握手をしよう」

「へ?」

「同志、今夜は女体の神秘についてたっぷり語り明かそうではないか」

「へ?」

にまーっと笑っている賢将、何がなんだか分からないエンジニア。

(女体の神秘? 一晩中? ちょっと待って、なんでそうなるの!?)

「む、そうもいかないか、この鍋、ご主人が楽しみに待っているんだったな。

親方、申し訳ないが日を改めるとしよう」

少し残念そうな長屋の賢者様。

「いずれにせよ、今のままじゃ進展は無いだろう。

なんとかするんだね。

鍵山雛の体を完全に支配し存分に舐り倒す日を目指し、発想と技術と情熱を駆使するのだ」

「ちょっとダンナ! 待ってよ! それが目標じゃないよ!?」

「いまさらキレイ事を言っているのかね?」

「でも、今のままでは話もできないんだよ!」

そろそろからかうのを止めるかな、とナズーリン。

「【そこ】にこだわるなら、こだわりたいなら、自力で何とかしたまえ」

望みはハッキリしているし、叶えるための手段もいくつかある、その能力も彼女にはある。

ならばここは突き放すべきだ、それが賢将の結論だった。

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