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ナズーリン! 魂魄つばめ返し!(1)

「妖夢、参りましょうか」

「はい、幽々子さま」

霊身の主従が白玉楼をあとにする。

今日は二人で命蓮寺を訪う予定。

妖夢は大事を控えているにもかかわらず、幸せに満たされていた。

(良かった、今日は【いつにも増して】優しくて穏やかな、そしてあまり無茶を言わない幽々子さまだ)

冥界の姫君、西行寺幽々子。

予測のつかない気紛れな無茶振りはいつものこと。

ほわーんとしているのに有無を言わせぬ雰囲気を持つ、これもカリスマの一種か。

真面目で世間ずれしていない妖夢はこの主に日々振り回され、てんてこ舞いなのだ。

だが、決して嫌いなわけではない。

時には姉のように、時には母のように優しく包み込んでくれるかけがえのない存在。

大好きなご主人様だ。

そんな主は気紛れ故か、月に四、五日、いつもの西行寺幽々子と異なるムードを醸す時がある。

その時はいつにも増して落ち着いた雰囲気で、言動に確かな気品があふれている。

白玉楼の主として、冥界の姫君として、身命を賭して仕えるに値する姿なのだ。

だが、しばらくすると【いつもの】西行寺幽々子に戻っているので妖夢は気紛れの一つだと思っている。

でも、魂魄妖夢はこのアッパー状態の主人を【advanced幽々子さま】と勝手に名づけている。

そして普段の『幽々子さま、大好きです』から『幽々子さま、大大大好きです』に昇格する。

今日のお出掛けは【advanced幽々子さま】と。

楽しさも一入だが、浮かれてばかりもいられない。

遊びに行くのではない、真剣勝負に行くのだから。

(たのもおー、って言えば良いのよね)

魂魄妖夢は命蓮寺を目前にして今一度口上を確かめる。

(寅丸星さんとお手合わせ願いたい、って言えば良いのよね)

妖夢は先の紅魔館のパーティーで寅丸星の槍の演武を目の当たりにした。

流麗な舞踊のような演武だったが、そこに秘められた戦闘力が桁外れなのは間違いなかった。

スゴい武人が幻想郷にやってきた。

『まあー、すごいわねー。

とーっても強そう。

妖夢とどちらが強いかしらー?』

演武を一緒に観ていた主人に問われた。

『幽々子さま、もしかしたら私、勝てないかもしれません』

あの目にも止まらぬほどの連続技を自分は躱しきれるだろうか? 自信がない。

その時の正直な感想だった。

それでも警護役として、指南役として、後れを取りたくない。

そして何より武術家の血が沸騰した。

【戦ってみたい】と。

敬愛する主人からの信頼。

これだけは絶対に譲れない。

手合わせをし、そして自分が勝利する姿を見せる。

あれほどの武人を打ち負かす自分を認めてもらうのだ。

あの日から自分なりに修練を工夫した。

祖父からの教えを忠実になぞり、さらにオリジナルの鍛錬法も加え、寝る間も惜しんで励んだ。

そして今日に至る。

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