紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! 魂魄つばめ返し!(8)

翌日も同じく素振りをやらされた。

マッサージのおかげで筋肉痛は無い。

それどころか昨日よりイケている。

なんと全力百回、十分に振り切れた。

「妖夢さん、いいですね、たった一日でこれほどとは。

やはり基本が身についているからですね」

寅丸から誉められ恐縮する。

だって今日のコンディションはナズーリンのフォローあってのことだから。

そのネズミの従者を見ると、ニッと笑ってウインクを返してきた。

それだけだった。

「では妖夢さん、次は連続素振り二百回です」

当然だと思った、まだ自分には必殺の【重さ】が無いのだから。

そう思えるのも昨日ナズーリンに解説されたからだ。

だが、あの時一番印象に残ったのは『師に出会う』と言う句だった。

「分かりました……あの、その前に質問してよろしいですか?」

「はい、何なりと」

「寅丸さんはどなたの教えを受けたんですか?

そしてどんな修行をしてこられたんですか?」

目の前の無双の武人が今の自分に必要な師であることはもはや疑う余地はない。

だからこそ聞いてみたかった。

「基本の型は毘沙門天さまからですが、実戦は、とある行者さまに指導していただきました」

淀みのない回答。

「び、毘沙門天さま……ですか!?」

スゴいメジャーネームが出てきた。

ザ・武神だ。

「ご主人様の槍術、棒術の技能は大変高い水準にある。

技術だけならすでに多聞様……あー、毘沙門天様を超えているかも知れん」

ネズミの従者がさらりと補足した。

「歴史上、名人、達人はたくさんいたが、それは【人間】の話だ。

私が知っている限り、今の【寅丸星の槍】の相手が出来るのは斉天大聖様ぐらいだろう。

まぁ、あの御方は別格だがね」

次は更にトンでもない名前が出てきた。

天界を向こうに回してたった一人で大暴れした伝説の怪猿。

いまだに純粋な武力では天界最強と謳われる武神。

振るう【棒】は単なる武器の範疇を越えた神器と言われている。

修行の旅では絶対的不利なはずの敵地においても師と仲間をその武勇と知略で守り抜いた。

(いくらなんでも、それはないのでは)

あまりに大きすぎる話にちょっと首を傾げる妖夢。

「うふふふ、ナズーリン、それはかなり言い過ぎですよー。

斉天大聖様ですって? そんなー、あはは」

恥ずかしそうに笑う寅丸。

(ですよねー)

妖夢も心で同意する。

ところがネズミの従者は眉間に皺を寄せて主人を見ている。

「昔、ご主人様に稽古を付けてくださったときに言っておられたでしょ?

お忘れなのか?」

「言っておられたって……稽古? どなたのこと?」

きょとんとしている毘沙門天の代理。

「……ねえ、本気で分からないのかい?

行者さまだよ、猿面の」

その昔、毘沙門天の代理になった後、聖白蓮達が封印され、二人だけになってしまった頃。

寺に立ち寄った行者がいた。

寅丸星はこの行者から実戦的な指導をみっちり受けたのだった。

「え? えええーー!? あ、あ、あ、あのヒト!

た、たたたたたっ大聖様だったんですかぁ!?」

目をまん丸くして狼狽えている。

「なんだ、ホントに気づかなかったのかい?

てっきり知った上で接していたと思っていたのに。

あの時は、さすがご主人様は器が大きいと感心したのに。

やれやれ、買い被りだったのか、はあ……」

ナズーリンは、ずるんっと肩を落としてがっかりしている。

「わ、私、いろいろ失礼しちゃいました!

お、お猿さんみたいですね、とか言っちゃいましたよぉー!!」

「そんなことを気にするお方ではないよ。

それに間違いなく猿だしね」

[←]  [小説TOP]  [↑]  [→]

PAGETOP
Copyright © 2011 東鼠回顧録 All Rights Reserved.