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ナズーリン! 魂魄つばめ返し!(15)

佐々木小次郎がいた時代、人間が言うところの江戸時代の初期、あの頃の剣術は基本、力押しだよ。

だって対人訓練のしようが無かったからね。

木刀だって思い切り打たれたら骨くらい簡単に折れるし、悪くすれば死に至る。

維新と呼ばれた革命の前、幕末って頃、んーもう少し前からかな?

袋竹刀や竹刀、剣道用の防具が出来てからだよ、攻撃技のバリエーションが一気に増えたのは。

擬似的な実戦訓練が出来るようになったのはこの頃からだもの。

ここでようやく素早いフェイント、多段打ち等の変化技が磨かれたんだよ。

……え? これはホントだよ、ホント。

話を戻すと、小次郎さん当時の剣士の基本戦法は力一杯真正面から打ち込むことにつきる訳だね。

そしてたとえ相手がこれを刀で受け止めたとしても、その勢いで体勢が崩れるの狙って次の一撃を放つ。

受けるほうも受けるほうで、体勢を崩さないように相手の刀を受け止め、むしろ弾き返して相手の体勢の崩れを誘うのが当時の剣術戦法のスタンダードだったね。

力任せの一撃をうまく躱す術を会得した人が剣豪と言われたんじゃないかな、多分。

んで、つばめ返しは橋の上で空を飛ぶ燕を斬り落とすことで会得したとされている。

つばめを斬るといっても空を舞っているのは斬りようがないから、つばめが餌を求めて水面近くを飛びまわっている所をバッサリ、だったんだろうね。

……ん? そうだね、確かにヒドイよね。

まぁ、しかし、これを斬るとしたら、縦に斬ったか、横に斬ったか。

どっちだったと思う?

……うん、縦のほうが斬りやすいよね。

大上段に振りかぶってつばめが下から上に飛び上がってくるのに対し、上から剣を振り下ろせば当たる確率は高いだろう。

だが、これは振り下ろす場所につばめが飛び上がってきてくれなきゃダメだよね?

でも、横に斬るとなればもっと難しい。

縦に急速に移動する物体を横からの動きで捕えようとすれば、交差するのはほんの一点だけで、少しでもタイミングが外れれば空振りだもの。

野球を知っているかい?

落ちる球の有効性を考えれば分かるでしょ?

でも、ここで横斬りのこと、ちょっと覚えておいてね?

さて、剣術で一番繰り出しやすい攻撃は?

……そのとおり、頭の上にふりかぶって刀の重さとともに相手に力一杯斬りかかる【面打ち】だよね。

剣道の基本素振りはこれだもんね。

小次郎さんの時代も剣術修行の第一歩はそこから始まっている。

また、この攻撃は理にも適っている。

人間型の視界は目線より下には見やすいけど、目線より上のほうを見上げることを苦手としているから、受けに回ると体勢を崩しやすく、案外防御の難しい攻撃なんだよね。

でも、そうなると防御も頭上から振り落としてくる刀に気が行くよね。

さて、ここで先ほどの横斬り、横薙ぎだ。

相手の意表をつく可能性はあると思わないかい?

……まぁ、そうだ、キミの言うとおり、ただの横の動きよる攻撃は視界の中にとらえ易いという欠点もあり、いくら素早い横薙ぎでもそれだけでは技にはならんだろう。

横薙ぎの攻撃は普通の構えをしている相手とって防ぎやすいから【胴】に隙がある状況でないと意味をなさないね。

そのあたりを何か解消する複合技でないと真の必殺技にはならないと思うね。

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