紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! 魂魄つばめ返し!(18)

期待して白玉楼に戻る妖夢。

根拠はないが、幽々子が帰ってきているような気がした。

自分なりの本懐を遂げたから、もしかしてと。

だが、気のせいだった。

一晩待ってみた。

翌朝、心を決めた。

迎えに行こう。

でも、八雲紫の隠れ家にどうやって行けばいいのか?

(紫さまのこと、詳しいのは……霊夢さんかなぁ)

半身の半霊と絡まりながらふよふよと空を行く。

漠然と博麗神社方面へ。

(でも、あんまり当てになりそうにないかなぁ)

基本、面倒くさがりで他人のことに頓着しない巫女。

仮に聞いたとしても答えは予想できる。

『んなこたぁ、知らないわよ』

多分そう言うはず。

この予想は的中するだろう。

やっぱり頼りになる賢将に聞くべきなのか。

いやいや、これまで山ほど世話になってしまっているのだ。

これ以上頼ったらあのヒトに【一人では何もできないダメな子】と思われてしまう。

それだけはイヤだった、絶対にイヤだった。

(んー、どうしよう……そうだ、頭の良くなる胡桃でも食べてみようかな)

もらった胡桃をポッケから一つ取り出す。

完全に乾いていない胡桃の実はそれほど固くない。

両手を使えば妖夢の力でも割れる。

(よいしょっと、うぎゅ〜〜……あ!? あああー!)

ぷりゅんっ、と滑って跳ねてしまった。

当然下に落ちていく。

(あわわ! せっかくいただいたのに!)

大慌てで急降下する。

空でモノを食べようとするからですよ。

地面に落ちてコロコロしていたが止まってくれた。

なんとか見失わずにすんだ、やれやれ。

妖夢が拾おうとするより早く何か小さなモノが胡桃に飛びついた。

(はへ?)

リスだった。

両手で胡桃を抱え、妖夢を見ている。

暫し睨み合いとなった。

『それは私の胡桃です、返してください』と言いたい。

でも、言ってもダメでしょうね。

いや、もしもリス相手に言ったとしたらかなりダメなヒトだろうし。

「仕方ないなー、大事な頂き物だけどアナタにあげる」

苦笑いするしかない。

リスはちょっとだけ様子をうかがっていたようだが、カリカリ、モグモグと愛らしい仕草で食べ始めた。

(うふふふ、カワイいなあ、ふ〜ん殻は食べないんだ。

ヒマって訳じゃないんだけど、もうちょっとだけ、ね)

食事風景から目を離せなくなり、しゃがんで観察することにした。

(とっても一生懸命に食べるんだね。

あ、頬袋が膨らんできた、カワイい〜)

お食事終了。

(うーん、結局最後まで見ちゃった。

でも、これでお別れね、リスさん? ……ん?)

当のリスさんは、食べ終えてからも妖夢を見つめていた。

(バイバイ、だよね?)

リスが、たたっ、と走り出した。

そして少しして立ち止まり振り返って妖夢を見た。

(んん? なんだろう?)

興味を惹かれ歩み寄る。

するとまた、たたたっ、と走る、そして振り返る。

(ついて来いってこと? これって【リスの恩返し】かな?

リスのお宿でおもてなし、のパターンかな? まさかね……)

みょんな打算を思い描きながらもとりあえずついて行くことにした。

ペースの上がったリスを小走りで追いかける妖夢。

だが、このリス、進んだと思ったら戻ってくる、そして突然方向を変える。

そしてまた戻る。

行ったり来たり、右に左に前に後ろに振り回される。

(な、なによ! 私のこと、からかっているの!?)

いい加減ついて行くのを止めようかと思った頃。

辺りが薄暗くなって空気が重くなってきた。

この感触、今までも何度か体験した感触、感覚。

異なる位相に移る時の感覚だ。

そう、【結界】を抜けつつあるのだ。

(今までの行ったり来たりは【越境】のための踏路……やっぱりリスのお宿!?)

妖夢さん、多分違います。

薄い靄の中、こじんまりとした古い屋敷が見えた。

根拠なんてないが妖夢は直感した、きっと間違いない。

あれは境界の大妖、八雲紫の家だ。

案内(?)してくれたリスはいつの間にかいなくなっていた。

だが、今の妖夢にはそれを気にしている余裕はない。

幽々子さまはあそこにいるはず。

幽々子さまに帰ってきて欲しい。

何故これほどの長期間不在なのか理由を知りたい。

そして、今ここで何をしているのか知りたい。

ならばとりあえず乗り込んでみるべきか?

『ごめんくださーい、魂魄妖夢でーす!

幽々子さまをお迎えに上がりましたー』

……いや、これじゃダメなような気がする。

どう考えても歓迎はされないだろう。

訪ねるモノを拒むからこその【隠れ家】なのだし。

そもそもここは来てはいけない場所なのではないのか。

目的地に着いたはいいが、その先のことを考えていなかった。

どうする?

このひと月ほど、妖夢は自分で考え、判断することが急激に増えた。

これほど頭と心を酷使した経験はなかった。

今までは幽々子に振り回されているようで結局は幽々子に決断も行動も委ねていたのだった。

【気紛れな主人に振り回される従者】この立ち位置は大変なようでいて実は楽なのだ。

自分で考えなくて良いし、最終責任を負わなくて良いから。

だが、今は自分の判断で自分の行動を決めなければならない。

(……よし! 決めた! 私は決めた!

気づかれないように、こっそり様子をうかがってみよう!)

カッコ悪い内容をカッコ良く決断した。

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