紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! 早天の霹靂(1)

「てゐさん、竹林の狼娘のこと、昔から気づいていたんですね」

「まあねー、ワタシの庭だし。

あそこは物の怪たちにとって、いい隠れ場所だからね。

他にもたくさん潜んでいるけど、よっぽどのことがない限り好きにさせているよ」

「他にも、って、全部、把握しているんですか?」

「大体はねー、中でも危なそうなのは三体くらいかな?」

「へー! さすがは【迷いの竹林】の支配者ですね!」

「はたて君、感心するのは早すぎるぞ。

コイツの場合【君臨すれども関知せず】の完全な放ったらかし政策だ。

なにか問題が起きても自分は何もしないで人任せだ。

こんなの支配者でもなんでもないよ」

ナズーリンが因幡てゐと姫海棠はたての会話に割り込んだ。

ネズミとウサギの悪友二人、そしてツインテールの鴉天狗。

命蓮寺へ向かって、ぺくぺく歩きながら話をしている。

「あのねナズリン、それだって【政策】の一つでしょ?」

「ふん、ちゃんちゃら可笑しいとはこのことだぞ、てーゐ」

【ナズリン】【てーゐ】

『なんだか呼びにくいから』とお互いの呼び方を勝手に変えている。

腹黒幼女風味のこの二人、先ほどから揚げ足を取ったり、けなしあったりするばかり。

お互い長い生の果てにようやく巡りあった初めての【ともだち】だとはたては聞いている。

公表しているわけではないので、このことを知っているモノは限られているのだが。

「デスクー、今日は因幡てゐさんへのインタビューなんですから協力してくださいよー」

はたてが困った顔で師匠に訴えかける。

それでもネズミの賢将とウサギの長老は、はたてのツッコミ能力を試すかのように喧嘩腰の掛け合いを繰り広げる。

姫海棠はたて。

最近では射命丸文と並ぶほどの存在感を示している新鋭の新聞記者。

発行部数では【文々。新聞】に及ばないが、愛読している層がとても濃い。

八意永琳、風見幽香、八坂神奈子と洩矢諏訪子、そして八雲紫、等々……

幻想郷の命運を左右しそうな大御所達が【花果子念報】の新刊を待っている。

元々は引き込もっていて、能力に頼るだけのマイナー記者だった姫海棠はたて。

縁あってナズーリンの指導を受けることになった。

新聞作りの基礎から厳しく叩き直された。

何度も涙を流しながらもくらいつき、今ではそれなりの記者になりつつある。

以来、はたては【ナズーリンデスク】と敬意を込めて呼び、一番弟子を自称している。

人間や妖怪、その他諸々でいつも賑わう命蓮寺。

はたては番記者と呼ばれるほど寺に出入りしているので、人妖の交わる出来事やイベントを最前線で取材できる。

それ以外でも綿密な取材内容を独特の考察で明快につづる記事は、学識もあり経験豊かな大向こうを唸らせている。

噂ではパチュリー・ノーレッジ、上白沢慧音、といった、誰もが一目置く学識者達がアドバイザーとなっているらしい。

【花果子念報】の姫海棠はたて、いつかブレイクするかも知れない。

報道・出版の世界を長年にわたり注意深く観察してきたネズミの賢将は、繊細だけど頑張り屋、そして優しい視点を持つはたてをずっと見守っている。

今でもちょくちょく記事の校正をしたり、取材の協力をしている。

競合している鴉天狗の某新聞記者は『ちょっと、ずるくない?』と顔をしかめているらしいが。

はたては次の新聞に直近の異変に関わった面々の特集記事を組もうと考えている。

まずは竹林に出現した狼娘を取材をするにあたっての下調べ。

迷いの竹林のヌシに背景をインタビューしようとしたが、このウサギ、いざ会おうと思うと見つからない。

そこで、因幡てゐの友人であるナズーリンデスクに仲介を頼んだのだ。

『渡りをつけとくよ』と快諾してくれ、今日に至る。

はたてはこれまでにも何度か因幡てゐと話をしたし、言動も見聞きしている。

愛嬌のある容姿で【幸運のウサギ】と称しながらも、幼稚なイタズラや少額の詐欺を仕掛けるロクでなしと評価されている。

だが、賢将ナズーリンがこの世で唯一【友人】と認めているのだから只者ではないはずだ。

『こちらは姫海棠はたて君だ』

『こんにちわー、ナズーリンデスクの一番弟子、姫海棠はたてです!』

『てーゐ、彼女は私の大事なお気に入りだ』

『はーい、はい、わかったよー、よろしくねー』

察しの良いウサギの賢者はこの二人の関係をすぐに理解したようだ。

【一番弟子】と名乗る、そして、本人の前で【大事なお気に入り】と言う。

ごく普通に、当たり前のように。

つまりは本当にそういった関係なのだろう。

てゐはナズーリンが心底認めた相手にはそれなりの接し方をする。

「あそこ(竹林)の平和を守るのがワタシの仕事じゃないもの。

何が居て、何をしているかを知っているだけで十分なんだよ。

暴れるようなヤツが出てきたら鈴仙かお師匠様に言いつけて、とっちめてもらえばいいんだからさ」

「ほら、やっぱり自分の手は汚さないんだ」

「なにさ、ナズリンだって荒事はご主人さん任せじゃん」

「私の仕事は探索だ、情報や物品のね。

元よりキミとはファンクションが違うんだから良いんだよ」

「ホントはビビりのクセにあちこち首を突っ込みたがるんだから」

「誰がビビりだって?」

ウサギ妖怪の口調はいつものようだが、内容は知性を感じさせる。

口を開けば罵り言葉ばかりだが、そもそもナズーリンとここまで言い合えるモノもあまりいない。

「あのー、インタビュー続けたいんですけどー」

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