紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! 早天の霹靂(5)

「どうやらあの娘、厨二病の類のようだ。

早苗どのの実力を見せつけてやって欲しい」

「さっきも言ってたけど、何かの病気なの?」

賢いてゐだが、広範な知識がある訳ではないので素直に質問する。

「確かに厨二病を治療しに永遠亭を訪ねるモノはいないだろうね。

早苗どの、一つ、具体例を見せてやってくれ」

指をパチンと鳴らすナズーリン。

「なんですー!? えっらそうに!

私が厨二病だとでも言うんですか!?」

ナズーリンには必要以上に突っかかる風祝。

「早苗ちゃーん、ワタシ、知りたいんだけどな」

「かしこまりました、てゐさま」

途端に恵比寿顔で微笑む。

早苗は左手を胸に当て、少し俯いた。

「俺の心臓に埋め込まれたマーキュリー回路は不完全なままだ。

バイパスを通すための【鍵】が手に入らないのだから。

……わかっているさ、このままでは勝ち目はないってことは。

だが、それでも時がくれば戦わなければならない。

アイツを止められるのは俺だけなのだから」

低い男口調で呟いた。

次に両手で頭をがしっとつかみ、全身をわなわなと震わせる。

「【コノエ】! もう一人のワタシ、今は出てこないで!

ダメ、今はダメなの! あああー!!」

絶叫のあと、ガクン、ビクンと頭を振る早苗。

「フフフ……【サナエ】手こずらせてくれたわね。

私はアナタみたいに甘くはないわ、全てを消し去ってあげる……クククク」

顔を歪め、邪悪そのものの声。

呆然としている因幡てゐ。

「まー、こんな感じですかね」

いつもの明るい口調で演技の終了を告げた。

「いやー、予想以上だ、恐れ入ったよ、大したものだ」

ナズーリンは感心している。

「ふふん、ざっとこんなモンです」

「今後のためにもちゃんとしたカウンセリングを受けたほうが良いよ」

「よ、余計なお世話です!!」

「でも、手遅れになったら生涯イタイままだよ?」

「だから! ほっといてください!」

「んー、つまり自分の中に何か特別なモノが宿っているって思い込みね?」

「要約すればそう言うことになります。

さすがてゐさまです」

口を挟んだてゐに再び恵比寿顔で応じる。

「その【特別なモノ】が高貴な血統だったり、達成しなければならない使命だっりする場合もありますね」

「大体わかった……ううっ!」

てゐが下腹を押さえながらしゃがみ込んだ。

「てーゐ! どうした!?」

ほぼ同時にしゃがみ込んだナズーリンに恥ずかしそうに告げる。

「ナズリン……あなたの赤ちゃん、もうじき生まれそうよ?」

「あん?」

「え……まさか、そんな!

イヤ! イヤです! そんなの、絶対イヤァーー!!」

「早苗どの、落ち着けよ、そんな訳ないだろうが」

「こういうことでしょ? 違うの?」

ケロッとして立ち上がったてゐ。

「てーゐ! 分かっていてやってるんだろう?」

「自分の中に何か特別なモノが宿っているっていう勘違いのことなんじゃないの?」

「ん、まぁ、そうなんだが、今のネタは実に微妙だぞ」

「ふーん、難しいんだねー」

(コイツ、絶対ワザとだ、自分だって早苗をからかっているじゃないか。

それでいて恨みは買わない立ち位置、まったくもってズルいヤツだ)

未だ納得のいっていない東風谷早苗を引っ張って比那名居天子の元へ戻る。

「つまり、その桃は食べられるのですね?」

「そうよ、あんまり美味しくはないけどね、不老長寿の元で身体のあらゆる能力を向上させるのよ」

「へー、まさに夢の果実ですね!」

「まあね、ふふん」

姫海棠はたてがイイ感じで天人を転がしていた。

「お待たせしたね、改めて紹介しよう。

守矢神社の風祝、現人神の東風谷早苗どのだ」

ナズーリンに引き合わされ対峙する。

天人、比那名居天子と現人神、東風谷早苗。

お互い存在は知っていたが面と向かうのは始めて。

(庶民受けしそうな娘ね、私には到底及ばないけど、まあまあだわ)

(かなりの美人ですが、生意気そうでいかにも【難あり】な女ですね)

お互いの第一印象はこんな感じだった。

「現人神よ、能を誇れば功を喪うだろう。

オマエは神である前に人間である事を自覚せよ」

天子が腕組みしながら厳かに言った。

『今のなーに?』

『天人は下界でそれっぽい忠言を宣うのが常なんだよ。

まぁ、その効果は相手によるんだろうがね』

例によってひっそり会話。

『ふうーん、だからなに? どうしろっての?

窮屈な生き方を押し付けたいわけ?』

常に表情を繕い、欺いてきた太古のウサギ妖が珍しく険しい顔をしている。

てゐは忠言や諫言の類が嫌いだ。

万単位の年月を生きてきた偏屈妖怪にとっては、こざっぱりと耳障りよく纏められた格言めいた言葉が気に入らないらしい。

『うん、うん、可愛いてーゐ、心安らかに。

誰にもキミの生き方を否定させないよ、私が全てを受け止めてあげよう』

ナズーリンは両腕を開き、唇を尖らせ、むにむに動かしている。

受け入れ態勢万全、いつでもおいで状態、さっきのお返しだ。

『……ちっ!』

ちらっと見せてしまった激情をすかさず拾い上げた変態ネズミにからかわれた。

回り込んでナズーリンのお尻をぼすんっ、と軽く蹴飛ばしたてゐ。

「オマエって呼ぶのやめてください!

私を【オマエ】って呼んでいいのは神奈子様と諏訪子様、そして未来の旦那様だけです!」

現人神が天人に言い返していた。

『ほう、ツッコミのポイントはそこか。

しかも未来の旦那様ときたぞ、さすがは最高位だ』

『でも、早苗ちゃんは良いお嫁さんになると思うよ』

『毎日楽しそうではあるね』

早苗のややズレ気味の返しに、ナズてゐもこれまた無責任にズレた感想を囁きあう。

そうこうしている間も【クラスA】の美人二人が相手の出方をうかがって小さな火花をとばしている。

「お二人とも、もうじきお昼だよ、命蓮寺の昼食会へ招待しよう。

話は道すがらでも構わないだろう? さあさあ、皆、出発しよう」

予想よりも時間がかかりそうだと判断したナズーリンが強引に場を仕切る。

元々てゐとはたてを昼食会に誘ったついでだったのだ。

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