紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! 早天の霹靂(7)

今日の命蓮寺の催しは流しそうめん。

因幡てゐ提供の大きな竹の樋を複雑に組み合わせた大がかりなものだ。

イベント好きの村紗水密がエンジニア河城にとりと共同で企画した。

何につけ大げさにしたがるムラサと、カスタマイズ好きのにとり。

この【Zwei Raketen】(二台のロケット)は合体するとどこまでもカッ飛んでいく。(by烈&豪)

複雑な水路を轟々と流れる豊富な水量はにとりの能力をフルに使って実現しているものだ。

ところどころで『ザッパーーンッ! ドッパーーン!』と水しぶきが上がっている。

その中をそうめんの白い塊が弾丸のように飛んでくる。

【命蓮寺・流しそうめん〜激流乱飛編〜】はこれでも当初の計画からだいぶ大人しくなっていたのだ。

『いい加減にしな! やりすぎだよ!』

お寺の年間最多セーブを記録している守護神、雲居一輪がギリギリリアルのところで抑えたから。

会場はすでに多くの人妖で賑わっている。

冗談のように速い流しそうめんだが、人間でも元気な若者ならなんとかついていけるスピード。

それでも気合を入れないと【捕れない】それが却って面白いらしい。

もろ肌を脱いだ若衆が激流に向かい『そいやっ! そいやー!』とそうめんを掬う。

それを連れ合いや老人、子供に自慢げに分けてやる。

『うっしゃーー!!』都度、歓声が上がる。

「ふーん、【流しそうめん】と言うのは随分と勇壮な催しなのね」

「……えーっと、まあ、こんな感じですかね……」

ふむふむと感心している天子だが、早苗はパンクしかけている。

(な、なんなんですか!? こ、こんな流しそうめん、【あちら】では見たことないですよ!)

東風谷早苗さん、おそらくどの世界にも無いので、ここは驚いて良いところです。

「お二人共、是非、命蓮寺の流しそうめんを食べていってくれ。

今回は少々特殊な仕様になっている。

汁椀を持ったままそうめんを掬うのはかなり難しい。

慣れるまでは掬う係と受ける係に分かれたほうが良いだろう」

(そ、そうですよね、これはかなり特殊なんですよね?)

ナズーリンの説明を受け、思考リズムをなんとかニュートラルに戻す早苗。

幻想郷の非常識に慣れてきたはずなのに未だに驚かされる。

「やり方は分かったわ、少しは楽しめそうね。

私が掬ってあげるからサナエが受けるのよ」

天子が早苗に命令する。

この短い時間で打ち解けた(思い込み多量、ほぼ一方的)二人。

片方はすでに呼び捨てだ。

モチのロン、早苗さんは面白くないがここはぐっと我慢。

青と緑の髪色が鮮やかなhighest quality少女二人。

人間たちが盛り上がっている水路とは別にあるやや小型のコースの中程に案内された。

世間一般レベルで言えば、一日中眺めていても飽きないほど可愛いのだ、いきなり混じったらちょっとした騒ぎになってしまう。

「さなえー! おーい!」

「おーい! やっほーい!」

見ると二人の下流で氷精チルノが手を振っている。

いつも一緒にいる数匹の妖精も山の風祝に元気に挨拶してきた。

「あら、皆さん、こんにちはー」

早苗は妖怪と妖精を分けてとらえている。

今はそうでもないが、基本、妖怪はボコる早苗だが現代娘らしく妖精にはファンシーなイメージを持っている。

幻想郷の妖精はイメージよりも存在感があり、自己主張も激しい。

それでも可愛いものだと認めている。

特にチルノたちとは仲がよい。

遊ぶときは少しお姉さんぶって色々と教えたりもしている。

例えるなら幼稚園の先生、あるいは歌のお姉さんか。

「さあ、いくわよ」

気合い十分な比那名居天子。

だが、この底抜け脱線美少女コンビは位置どりを間違えていた。

カーブしたコースの出口、少し段差があって微妙な緩急がつく場所。

その球(そうめん)は分かっていても空振りしてしまう完成度の高いシンカーだった。

天子は決まったコースにしか来ないストライクボール(そうめん)を何度も見送り、そして空振りした。

取ろうとするアクションが大げさでお間抜けな感じなので、はじめこそ見て笑っていた早苗だが、一向にそうめんを口にすることができず、だんだんイライラしてきた。

今日の蕎麦つゆは博麗神社にお供えしてあった海苔を使った【浅草つゆ】。

海苔は海産物が採れない幻想郷では大変な貴重品。

しけっていてヘナヘナだったが、寅丸星は軽く炙ったあと細かくちぎって出汁つゆで煮てネギやゴマ、紫蘇等を加えた【浅草つゆ】にしたのだ。

早苗はこっそり味見をしていた。

(お、おいしいーー! これでそうめん食べたら絶対イケます!)

だから慌てていらだっていた。

「あ、行っちゃった」

またしても空振り。

「もーー!! なにやってんですか! ボンクラですか!?」

割と温厚な風巫女だが、ふざけてるとしか思えない天人のトンチキな動きにとうとう爆発した。

「ぼ、ぼんくらってなによ!」

「ボンクラったら、ボンクラなんですーー!!

やる気あるんですか!?」

「当たり前じゃない! やる気満々よ!」

「それでこのザマなんですか!?」

「うー、次はちゃんとやるわよ」

右手で箸を肩の高さで構え、左手の指先はビシッと竹の樋を指す。

そもそもこの余計なポーズが原因の半分以上なのだが。

「あ、サナエ、赤いのが入ってる! ほら! 見て見て!」

また見送り。

現界ではほとんど見られなくなった色付きそうめんだった。

「がああーー!! なにに気を取られているんですか!

紫蘇か何かで色つけているだけですよ!

あんなの飾りです! 偉い人にはそれがわからんのですよ!」

「そうか、分かったわ、こうすればいいのよ!」

天子は竹の樋に箸を突き立てた。

確かにこれなら黙っていても引っかかるが、あまりにもナニだ。

下流に陣取っている妖精たちからも『ぶうー ぶうー』とブーイング。

ピリッピッピピー。

「お嬢さん、それは反則だよ」

命蓮寺のルールブック、雲居一輪がホイッスルを鳴らした。

そりゃそうだ。

「代わってください!」

たまりかねた風祝が怒鳴る。

このボンクラ天人、全く当てにならない。

しぶしぶポジションチェンジに応じる天子。

「いいですか! こうやって掬うんです……あ、緑色のそうめんだ! キレイ!」

「こらー! アンタ! なにボーッとしてんのよ!」

「い、今のはタイミングを見ただけです」

「また来たわよ! いい? せーので……はいっ!」

空振り。

「ったく、トロいわねー なにしてんのよ?」

「アナタが変なタイミングを口を挟むからです! 黙っててください!」

「ふーん、じゃあ黙っているわよ」

また空振り、 『チッ』

「い、今、何か言ったでしょ!?」

「なにもー。

……サナエ、あのさあ、そのバカっぽい袖が邪魔なんじゃない?」

「バカっぽいってなんですか! 風祝の正装ですよ!」

「流しそうめんに正装が必要なの?」

「むー、そう言えばそうですね……仕方ありません」

早苗はベルトのバックルに付いているレバーを引き起こす。

「キャストオフ!」

言ってからゴソゴソと両袖をはずして畳んで傍らに置いた。

「なにそれ?」

「正しい脱衣様式の一つです」

「ふーん、ここでその袖が【ドサァッ】って感じで妙に重かったりしたら盛り上がるのに。

『こ、こんなものをつけたままで今まで!』ってさ」

「余計なことは言わなくて結構です、さあ、ここからが本番です!」

ノースリーブ巫女さんが気合いを入れ直して構える。

「アンタ、二の腕にお肉がつきすぎじゃない?」

ピクッ

「あー、また行っちゃったじゃないの」

「だっっ、かっっ、らっっ! 余計なことは言わないでください!」

「うはーおいしかったー。

さなえー! こっちはもういいよー! さなえも食べなよー」

下流からチルノの声がした。

妖精たちは並の人間よりはるかに俊敏だ。

激流の中のそうめんを、ほいほい、さくさくっと難なく掬っていた。

大苦戦している人間ベースのお嬢さん二人のエラー分は漏れなく妖精たちがいただいていた。

「そ、そうですね、そろそろいただくとしましょうね。

……と、とったあーー!!」

守矢神社の風祝がついにキャッチに成功した。

天子が持っている椀に移そうとその場でピボットターン。

べしょ 地面に落ちた。

「……アンタ、祟られてるの? それともバカなの?」

天子はもったいなくも落っこちてしまったそうめんと早苗を交互に見ながら憤怒の表情。

「むぎーーー!!

アナタがさっさとお椀をよこさないからイケないんでしょ!

このボンクラ天人!」

「ヒトのせいにしたわね!? ぶきっちょボケナス娘が!」

「なーんですってぇー!」

「まあまあボンクラさんもボケナスさんも喧嘩はよしたまえ」

二人のやりとりを涙笑いで見物していたナズーリンがようやく間に入った。

「今回の仕掛けは正直【イロモノ】だ、向き不向きがある。

だから取れなくとも気にすることはないよ。

広間に別にそうめんを用意してあるからゆっくり食べてくれ」

「でも……」

見た通りの負けず嫌い比那名居天子、隠れ負けず嫌いの東風谷早苗。

二人とも負けたような気がして納得がいかない。

「お二人にも是非食べて欲しいからね。

ここは笑って退いてくれまいかな?」

ネズミの妖怪からの譲歩案、二人は顔を見合わせた。

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