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ナズーリン! 早天の霹靂(11)

「早苗に状況を伝えるべきだと思うがね。

その上でどうするかは彼女の判断次第だ」

「早苗ちゃんは優しいから状況を聞いたら自分の気持ちを抑えて天人の娘を助けようとするよ。

でも、それはあのコの本心じゃないから後でたくさん傷ついちゃう」

衣玖と別れ、命蓮寺に戻ったナズてゐ&雲山。

雲山は何も言わずに飛んでいってしまった。

「ホントにキミはあのコに甘いな」

「ワタシにだってそんなコが一人くらいいてもいいでしょ」

東風谷早苗が比那名居の当主に『天子さんの友達です』と告げる。

自分が緋想の剣を見たいとねだってしまったためにこんなことに、と説明する。

私の友達を許してくださいと懇願すれば状況は好転する。

だがそれは風祝の心内を完全に無視することが前提だ。

「早苗はお使いに行っているよ」

翌日、守矢神社を訪れたナズ&てゐを洩矢諏訪子が迎えた。

早苗へのアプローチは彼女の現況を確認してからにしようと意見がまとまった。

だが当人は不在だった。

「ナズーリン、そちらのウサギさんは?

何度か見かけているけど」

「ワタシは因幡てゐ、ナズリンの友達、よろしくね」

珍しく真面目に答える詐欺ウサギ。

「早苗がよく話す『てゐさま』だね。

その節は【娘】を助けてくださり、ありがとう」

軽く頭を下げた。

「どういたしまして」

「なるほど、よく見ればタダモノじゃないようだね。

ナズーリンの友人か……ふうーん、いいコンビだ」

最凶クラスの祟り神がニヤーっと笑う、ちょっと怖い。

なんだか落ち着かない腹黒コンビ。

「ところで比那名居天子と言う天人を知っているね?

早苗の友達なんだけど、最近見かけないんだよ。

あ、昨日も言ったっけかな? 何か知らないかい?」

いきなり核心をかすめる剛速球。

諏訪子の中では天子=早苗の友達、のようだ。

「聞いたところによると事情があって外出できないらしい」

ナズーリンが言葉を選んで言う。

「そっかー、だから早苗の元気がないのかな。

聞いても何でもない、としか言わないけど、きっとあの天人娘のことだね」

風祝は昔から大抵のことは諏訪子、神奈子の二注に報告するのだが、この件は特別のようだ。

『んー、これは好機なのかな?』

『分かんないな、迷うとこだね』

『キミが迷うとは珍しいな』

『大事なもののことは心が揺らいで判断が鈍くなるんだよ、アナタだってそうでしょ?』

『違いないか、だが今回は……』

『ワタシたちがやるよりマシだと思うよ』

毎度の高速会話は結論に至った。

「諏訪子どの、早苗と比那名居天子の件、分かっていることをすべて話すよ」

ナズーリンはこれまでの状況を説明した。

友達云々で決裂したこと、秘宝を持ち出そうとして幽閉されたこと、天子の思いのこと、比那名居の当主のこと等々。

表現力豊かな毘沙門天の遣いは、報告・説明のエキスパートだから漏れは無い。

「そうか、やはりまだ【コノエちゃん】のことを引きずっているのかな。

まだまだ多感な年頃だし、仕方もないか……」

ナズーリンの説明を聞き終わった洩矢諏訪子が腕組みしている。

そして。

「大事な【娘】のことだ。

この先は私に任せてもらおうか」

とりあえず小悪妖怪二匹の目論見通りの展開になった。

早苗は困っていた。

あの時はトンデモ天人からヒドいことを言われ、感情がほぼMAXまで高ぶってしまった。

普段の自分なら決して言わないようなキツい言い方をしてしまった。

でも、間違っていたとは思わない。

『友達になってあげようか?』

フザケた奴だし許せないし。

かつての親友とは余りに違いすぎる。

でも、一緒に行った人里の甘味処やミスティアの屋台。

『サナエのオススメは? 何が食べたいの? 私も食べてみたい』

およそは自分勝手なのだが早苗の好みを優先しようとする。

ちょっと気の利いた面白いことも言う。

腹の立つことも多いが退屈している暇がない。

(それでも、友達なんて思えないな。

だって無神経だし ……そう言えば【コノエ】も結構、無神経だったな、あはは。

私、気にし過ぎなのかな? いえ、そんなことないはずだ)

天子が来たらなんて言おう。

謝る必要はこれっぽっちもないはずだ。

それでもあれこれ考えていたのにいつまで待っても来ない。

来やしない。

全くもって勝手な娘だ、人の気も知らないで。

「おーい さなえー」

「……諏訪子様」

「少し前に何度かやってきた天人の友達がいただろ?」

「友達ではありませんよ」

「悪さをして幽閉されたそうだよ、数年は出てこれないようだ」

「え?」

諏訪子はナズーリンから伝えられた情報をかなり端折って伝えた。

「数年……」

千年単位で生きている神様や妖怪と、最近まで人間だった早苗の時間感覚には当然ズレがある。

「かわいそうだから助けてあげなよ」

「私がですか?」

「オマエにしかできないんだよ。

私、友達です、許してやってくださいと告げたら多分解放されるんだとさ。

簡単だろ?」

「でも、でも、私、あのコの友達じゃありませんよ」

「だったら友達になればいいじゃないか」

「ええー?」

「ヤな娘なのかい? 嫌いなのかい?」

「よく分かりませんけど……」

「分からないのならとりあえず行動しなさい。

行っといで、GO GO GOだよ! さあ、早く!」

「は、はい!」

改めて出かける支度をするために社殿に下がった早苗。

物陰に隠れていたナズ&てゐはその様子を確認して飛び出した。

洩矢諏訪子に二人して詰め寄る。

「ちょっと! 諏訪子どの! いきなりすぎるだろ!?」

「ねえ! 早苗ちゃんの気持ちはどうなるのよ!?」

かなりセンシティヴな問題だったので保護者の判断に任せたのだ。

丸投げとも言うが。

だが、土着神の頂点は繊細な部分をフルスイングでカッ飛ばしてしまった。

当の諏訪子は至って涼しい顔。

「オマエたち、難しく考えすぎなんじゃないか?

例えば私と神奈子だって始めは互いを滅ぼそうとしていた立場だったよ。

それが今ではこんな感じさ。

どんなきっかけで友達になるのか、それこそ神にだって分かんないよ」

眼前の神様が言っていることはきっと真理だろう。

だが、ナズーリンとてゐは揃って渋い顔。

「早苗は考えすぎる嫌いがあるからね。

たまには背中を突き飛ばしてやった方が良いんだよ。

それに、二人とももう少し信用してやっておくれよ。

ウチの早苗は可愛くて優しいだけじゃないよ、とても強いんだから」

そう言って得意げにニマァと笑った。

「それにあの天人の娘、素直じゃないけど良い子だよ。

そうだろ?」

諏訪子はナズーリンとてゐをゆっくり交互に見る

「まぁ、悪い奴には見えないがね」

「生意気だけどズルくはなさそうだし、ひねくれているけど正直そうだし」

「てーゐ、何か私に含むところがあるのか?」

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