紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! 早天の霹靂(13)

「天界って勝手に入れるの?」

ウサギがネズミにたずねる。

「もちろん結界はあるよ。

でも、衣玖どのが一緒だから問題ないだろう。

それに私だけでもどうとでもなるしね。

なにせ私は天界のそのまた上、天上界の神様の遣いなんだから」

「へええー、すっごーい、知らなかったわー」

棒読みのてゐ。

「そ、そうなん……ですか?」

早苗は素で驚いている。

本当に知らなかったようだ。

「キミが意図的に私に関心を持たないようにしているのは分かるが、これは幻想郷の【常識】だよ」

「てっきりタチの悪い冗談かと」

「失礼だね、 ん? 私を尊敬する気になったかな〜?」

「全く逆です、神様の遣いなのになんでこんな……こんな……」

「早苗ちゃん、ハッキリ言ってイイよー」

「ひねくれてて意地悪で変態なんですかーー!」

ハッキリ言った。

「そうだよねー あっはっは」

笑うてゐにつられてナズーリンも大笑い。

「うはははー! いやー、まったくだなー!」

「笑ってる場合ですか!」

雲山に乗った四人のパーティーが雲海を昇って行く。

「とりあえず【お姫様】を救い出すことが先決だ。

幽閉されているお姫様を救い出すのは勇者か王子様と決まっているからね。

王子様、頼むよ?」

ニタっと笑いかけられ早苗は歯噛みする。

「ぐぎーっ!」

「早苗王子、比那名居の屋敷が見えてまいりました」

リュウグウノツカイが真面目くさって言う。

「それ! やめてください!」

「雲山さんは近くで待機するそうです。

『朗報を待つ』と仰せでした」

四人は比那名居氏の屋敷の敷地に入った。

「広いお屋敷ですね」

「天界は地上よりヒトがずっと少ないのでゆったりしているのです。

あれが本邸、母屋です。」

指を差す建物から使用人らしき女性が出てきた。

衣玖に気がついたようだ。

「あら、衣玖さん」

「ご当主様はお屋敷においでですよね?」

「ええ、何かご用事?」

事情を説明し、当主に目通りを願う。

「総領娘様の……お友達ですか?」

女性が早苗をまじまじと見た。

「す、少しお待ちを」

言い残してパタパタと母屋に入って行った。

しばらくすると一人、二人、三人とポツリポツリ複数の男女が出てきて辺りをうろつきだした。

皆、何気なさそうな振りをしているが総領娘の友人を見るためなのは明らかだった。

比那名居天子が関係者にどう見られているかなんとなく分かる。

『よほどの珍事いや、椿事なのかな』

『あの娘に友達が出来たってのが一大事みたいね』

シュシュルルン。

やがて先ほどの女性が出てきた。

「ご当主様はお忙しいのでお目にはかかれません」

一同から失望のオーラ。

「ですが、総領娘様とお話することは許すそうです。

ただし、謹慎中なので直接会って話すことはかないません。

門番を通してやりとりしてください」

「門番?」

リュウグウノツカイが少しだけ首を捻った。

天子が軟禁されている土蔵は大分離れた場所にあった。

天界に土蔵が必要なのかは分からないが。

土蔵の門番は和風の作業服を着た初老の男性だった。

衣玖が会釈をして三人を紹介する。

「それで総領娘様のご友人は?」

「私、東風谷早苗です。

天子さんに取り次ぎをお願いします」

「貴方がお友達ですか、そうですか、そうですか」

この男性も驚きを隠していないが嬉しそうでもあった。

「それでは伝えてまいりますので暫しお待ちください」

門番が土蔵の扉を開けると中にもう一つ扉があった。

表の扉を閉められたので中の様子は分からない。

少しして出てきた門番の表情は曇っていた。

「総領娘様は【東風谷早苗】なる者をご存知ないそうです」

は? ×3

「あの、ちゃんと取り次いでいただけたんですか?」

「無論です。

『お友達の東風谷早苗様がおいでです』とお伝えしました。

すると『そんなコ知らない、友達なんかじゃない』と。

……貴方は本当にお友達なのですか?」

男性はあからさまに訝しがっている。

「想定はしていましたがソー娘の得意技【依怙地になる】が発動しましたね」

門番に『ちょっとお待ちを』と告げたお目付け役が顔色ひとつ変えず淡々と解説する。

客人三人の眉間に程度の差こそあれ揃って皺が寄った。

(メンドクセェー)×3

「面倒くさい娘で本当に申し訳ありません」

そう言いながらもちっとも申し訳なさそうにしていないが。

「てゐさま、天子さんは中にいるんですよね?」

小声でたずねる。

「それは間違いないよ」

ウサギ妖怪の聴覚は土蔵の中の会話くらいたやすく聞き取れる。

「こちらから大きな声で呼びかけたら中に届きますか?」

「多分聞こえるけど、かなり頑張んないとだよ」

「了解です、衣玖さん、もう一度トライします」

「天子さーん! 天子さーーん! おおおーーい!

せっかく来てあげているのに! 帰っちゃいますよ!

いいんですかーー!!」

「若い娘がそんな大声を出すものではありません、恥ずかしくないのですか」

突然の早苗の号声に門番の男性が驚いて窘める。

「と、と、友達のためなら恥ずかしいなんて言ってられません!

てゐさま! 天子さんは何と言っていますか!?」

「……んー、『サナエのバカ』って繰り返してるね」

「な・ん・で・す・とーー!」

(ここまでしているのに! どっちがバカですか!

……てか、なんで私、あのヒトのためにこんなことやってるんだろう?

腹が立ってきました! 直接文句を言わなきゃ気が済みません!

そして、新作の水饅頭を山ほど奢らせてやります!

お山の紅葉の観賞ポイントが間違っていることを教えてやります!

ホントに素敵な男性は見てくれではないと分からせてやります!)

「出てこれないのなら私が中に入ります!

門番さん! 全ての責はこの東風谷早苗が負います!

止め立て無用です!」

「お? 強行突破か? いいのかな?」

ナズーリンがお目付け役に確認する。

「行って良いでしょう、今はそういう【空気】ですね」

「守矢神社の風祝、東風谷早苗! 推して参ります!」

実はキレるとマジヤバイ美少女現人神が扉へ突進する。

その勢いに門番は思わず脇へ避けた。

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