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ナズーリン! 旧地獄のズバット(1)

「うん? どうしたんだ、パルスィ?」

「勇儀、あの妹紅って娘、危ない……とっても危ない」

「んー、聞くところでは、凄腕の妖術師で不死身らしい。
とても強くて危険なヤツなんだろうな。
面白いな、いっちょ、やり合ってみるかな?」

「そうじゃないのよ!」

水橋パルスィは楽しそうな星熊勇儀にいらだっている。

「なんだ? どういうことだ? 分からないよ」

言葉を額面通りに受け取り、深読みをしない勇儀はパルスィの言いたいことがホントに分からない。

橋姫の視線は藤原妹紅に注がれたままだ。

腰まで届く長い白髪、整った顔立ち、確かに目立つ。
だが、痩せ気味であるし、目つきには明らかに険がある。
抜群の美人、とは言い切れない。
それでもパルスィは危険を感じた。

間違いない、あれは【イイ女】だ、それも桁外れの。
少し擦れた感じはこれまでの辛い生の現れだろうか。
それでもあんなに綺麗に笑えるのだ。
ただの娘ではない。
拒絶され、孤独に苛まれ、迷って狂って、それでも最後に何とか踏ん張れた女だ。
自分と同じ匂いがする、そしてあっちの方が上等な気がする。
パルパル とても危険だ。

「ねえ、勇儀、あの妹紅って娘、どう?」

「どうって? そうだな……んー。
なんだかオマエと似た感じがするなぁ。
うん、私の好みだ、かなりイイな」

鬼の四天王の一角は直球しか投げない。

「ゆ、勇儀」

やっぱりそうなんだ、泣きそう。

「おや? 久しぶりに嫉妬かい? わははははは!」

鬼の大将は大笑いで返した。

「三千大世界で一番の女がここにいるんだぞ?
私はなぁ、どうすればオマエがもっと私に夢中になるか、そればかり考えているんだ。
足りないアタマを使ってね」

片手で力強くグイっと抱き寄せる。

「そ、そうなの?」

嘘の言えない鬼の言を疑う必要は無いはずだ。

(もっと夢中って、私はとっくに勇儀の中に棲んで居るのに……)

数時間前、午前中から命蓮寺を訪れた星熊勇儀と水橋パルスィ。
旧地獄とは相互不可侵の取り決めがあった。
だが、いくつかの異変を経て緩くなっているので堂々とした訪問だった。

「お、おは……おは、あ、あの」

門前で掃除をしていた幽谷響子は鬼の中の鬼を前にパクパクしていた。
いつもの元気の良い挨拶ができない。
以前会ったこともあるし、宴席で声をかけられたこともある。
しかし、目の前にいる大妖がまとう空気は圧倒的だった。
妖怪の頂点たる【鬼】そしてその中で最強の力の持ち主、星熊勇儀に肝を抜かれてしまっている。

「山彦のお嬢ちゃん、久しぶりだね。
取り次いでくれるかな?」

鬼の大将が少し屈んで顔を近づける。
当の鬼は至って友好的なつもりなのだが、響子は『ヒッ!』と固まってしまった。

「勇儀、怯えさせてどうするのよ」

パルスィが鬼の腕を引っ張って下がらせる。

「怖がらせてゴメンね。
ナズーリンさんに取り次いでもらえるかしら?」

元々の美貌に最近では穏やかさと艶っぽさが加わり、美人揃いの幻想郷においても一軍レギュラーの座を獲得した妖美姫が優しく笑んだ。

「ふえ……あ……はい!
おまちくださーーい!」

橋姫の微笑みにちょっとボーッとなった響子だが、気持ちを改め、パタパタと駆けだした。

「ナズーリーン!
おーーい! ナズゥーリィーーン!!」

「勇儀どの久しぶりだね。
して、本日の用向きは?」

「なんだい、カタいなぁ。
遊びに来たんだよ」

ナズーリンは旧地獄の顔役に怯むこともなくたずねる。
パルスィは寅丸星とハイタッチをしたあと、楽しそうにチャット(おしゃべり)を始めている。
この二人、とても仲が良い。
お互いの恋愛事情を理解し、応援しあう【盟友】だから。

「なあ、ナズーリン、例の上白沢慧音先生を紹介して欲しいんだよ」

「慧音どの? ああ、先日の件か」

以前、勇儀がパルスィを伴って命蓮寺を訪ねた際、変態エロネズミから『ただのスケベではない』と高評価を受けている上白沢慧音が気になり、紹介してもらう約束を取り付けていた。

「それは良いけど、パルスィどのは、その目的を知っているのかい?」

「パルスィには学校の先生に会って、役に立つ話を聞くと言ってある。
鬼は嘘を言わないからね」

確かに嘘は言っていない。
真実を全部言っていないだけだ。

「微妙にズルいな……まぁ、いいか、私も聞きたいしね」

【役に立つ話】つまり、性技の話だ。
自他ともに認めるドスケベの鬼&ネズミだが、スケベとして更なる高みに達したいという思いは共通している。
しかし、相手のスケベ事情に得心がいっているわけではない。
ナズーリンは、鬼のスケベは品が無いと断じているし、勇儀はネズミのスケベは理屈っぽくて肝心の一歩が踏み出せないヘタレだと決めつけている。
スケベ、スケベとしつこいが、ここで引っ張り出されたのが現在、スケベのゴールドメダリストと目される上白沢慧音先生だった。

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