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ナズーリン! 旧地獄のズバット(6)

パルスィに追いついた妹紅だが声をかけるでもなく、少し後ろを黙って歩いている。
やがて二人は人気のない岩場に腰掛けた。
結構な時間を経てからパルスィがしゃべり始めた。

「まだ我慢できるよ、自分で決めたことだから。
これまで当てもなく待っていた時間に比べたらなんてことないもの」

立派な台詞だが、泣きそうな表情なので極めて不自然だった。

妹紅はパルスィの肩をそっと抱いた。

「ねえ、パルスィ、本当に困ったことになったら、この【符】を地上に向けて放って。
私を呼んで。
必ず、絶対に駆けつけるから」

「……ふふ、ありがと。
でも、それはお互いってことにしようよ。
私だってそんなに弱くはないのよ?」

「私のことを忘れてはイヤですよ」

いつの間にか寅丸が立っていた。

「寅丸さん? どうやってここへ?」

妹紅は自分たちを尾行しているモノはいないと確信していたので少し驚いた。

「ナズーリンの子ネズミさんに教えてもらいました」

抜け目のない賢将の配慮だった。
妹紅と反対側、献妻を両側から守るように座った。

「妹紅さん、星さん、ありがとう。
やっぱり私、今は幸せなんだ。
だって、だって、その、と、ともだち……」

あとは嗚咽に変わった。

パルスィが落ち着いた頃、大きな力の気配が近づいてきた。

「皆で温泉に行こうじゃないか」

星熊勇儀の提案はいつも唐突だ。
上白沢慧音とナズーリンもいる。

「勇儀、宴会はどうしたの?」

「いつものように朝まで宴会では代わり映えがしない。
せっかく客人が来ているからね、新名所に案内することにしたんだ。
さあ、行こう!」

パルスィの手を握って立ち上がらせた。

「うあ……ねえ勇儀、手、爪が割れているよ?」

「私は鬼だぞ? こんなもの直ぐに治るさ」

人通りの多い往来に出ても手を離さない相方にパルスィは慌てた。

「ゆ、勇儀!?」

「いいんだ」

「でも、皆に見られるよ」

「もう、いいんだ。
オマエとの約定は破らせてもらうよ。
この星熊勇儀、最初で最後の約定破りだ。
【水橋パルスィ】は誰にも渡さない。
そして、もう誰にも文句を言わせない」

力強い言葉にただ頷くだけのパルスィ。

いくつかある地下温泉の中でも最上級の湯屋。
本日はたまたま他に客はなく、貸切状態だそうな。

※注※ 泥酔状態での入浴は大変に危険です。
良い子の皆は絶対に真似をしないでください!

「どうして一緒に入っちゃいけないのさ」

ナズーリンが主人に食ってかかっている。

「なんとなくです」

「慧音どのはなんで良いの!?
私よりはるかにすけべいなんだよ!? 絶倫昇天大王だぞ!?」

「慧音さんは清く正しいですから」

「すけべいに清いも正しいも無いだろう!
納得のいく説明を求める!」

「だからなんとなくです」

「そーーんな理由で承服できるモノかーー!」

「おだまりなさい」

「わはははは、オマエ、信用無いんだなー、わっははは」

エロネズミの虚しい奮闘を笑っているエロ鬼。

「勇儀もダメよ」

「ははは……はん? パルスィ? ……なんで?」

「なんとなく」

「おいおい、私はコイツと同じ扱いなのか?
さっき、私の覚悟を認めてくれたんじゃないの?」

「それとこれとは別なの、ダメったらダメよ」

「むう、それじゃ、私はナズーリンと入ることになるがいいのかい?」

寅丸とパルスィが顔を見合わせる。

「なあ、パルスィ、私の貞操がどうなってもいいのか?
このエロネズミに好き放題犯されてしまうんだぞ?」

「待ちたまえ、そのセリフはどう考えても私のモノだろう?
ねえ、ご主人様、きっとこの変態鬼にスゴいことされてしまうよ。
容赦なく拡げられて、元に戻らなくなったらどうするの?」

寅丸とパルスィが再び顔を見合わせる。
そして同時に頷いた。

「お好きなように」×2

「はああーー!?」×2

互いの相方を信じているからこそか。

---湯殿にて---

ああだったらいいだろうなと憧れる想像上のハイパーボディがそこにあった。
全裸の寅丸星。
予想はしていたが、現物は想像の二段階ほど上にあった。

いくら親しい仲でも凝視するのは失礼だからと、それでも慧音と妹紅は何度もチラ見する。
この姿まま朝日に向かって大きく伸びをしても様になりそうな爽やかで健やかな美身。

慧音も妹紅も十二分にグッダーなスタイルだが、この相手はパーツごとにあれこれ言うのが虚しくなるほど総合力が飛び抜けている。
強いて難を言えば乳が立派すぎる、いや、これって難でも何でもないか。

最後に入ってきたのは四人の中ではもっとも小柄なパルスィだった。
彼女は自分達とさほど変わらないように見えるのに、全体のバランスが絶妙で【完全体】と呼べるほど整っていた。
特に肌理の細かさ、美しさが圧巻だった。
光沢があるのに瑞々しい、一体、どんな触り心地なのだろうと、思わず手を伸ばし確かめてみたくなる。

そして現在絶好調の橋姫の魅力は外観だけではない。
服を脱ぐ所作も慎ましやかで品があり、湯殿での仕草にも何とも言えない艶がある。
今は、立て膝で少し首を傾げ、肩口から桶の湯を掛け流していた。

三人の視線に気づいたパルスィが不思議そうに聞く。

「何を見てるの?」

「いや、その」

「べ、別に」

逆に恥ずかしいけねもこ。

「パルスィさん、とっても綺麗です!」

ハッキリと口にするのは寅丸。

「よ、よしてよ、 女同士なのにぃ……」

身を縮こませ、恥ずかしそうに流し目をくれた。

ゾクッ ゾクゾクッ!
体の芯が揺さぶられる。
その仕草、表情、なんともそそられる。

(こ、これは【女子力】とか言う表面的なものではない。
この妖美はもっと根源的な【雌】の力であり、陰に潜むことにより研ぎ澄まされ……)

(うひゃあ……これじゃ地獄の鬼もイチコロだぁ。
やっぱり危険なほど魅力的、でも、でも、いつか私も……)

(パルスィさん、素敵、かーわいーですねー)

受け取り方は三者三様だが、仮に点数をつけるのなら揃って百点を入れることは間違いない。

一方、鬼とネズミは隣の岩風呂。

隣からキャッキャとはしゃぐ声が漏れ聞こえる。

「あっちは楽しそうだなー」

「あー そだねー」

こちらはまったく盛り上がっていない。

「ふいーー、まあ、たまには静かなのもいいか」

勇儀は湯船の縁に両腕を広げ、幻想郷【乳八仙】の双丘を惜しげもなく晒している。
ナズーリンの見立てでは、寅丸星よりAC(アーマークラス)が2Pほど高いダイナマイトボディだ。
逞しく、引き締まっていながら女性としての柔らかいラインを維持している。

(これは素晴らしい……だが、今は気乗りがしないなぁ)

大好物の豊満ボディを目の当たりにしているのに心が躍らないエロ将。

湯に浸かっているので顔の高さはほぼ同じ。
普段ではあまり見られない角度なので、ナズーリンは改めて至近で勇儀の顔を眺めた。
手拭いで長い金髪をくるみ、うなじを見せているのが新鮮だ。

「髪は包むんだね」

「湯が汚れるからな」

「へえ、そんなことを気にするんだ」

「当たり前だろ、私をなんだと思ってるんだ?]

なににつけ大雑把だと思っていた鬼の意外な一面に少し感心したナズーリン。

いつもは大きな赤い角に目が行ってしまうが、今はじっくりと顔を見る。
切れ長の目、すっきりとした鼻梁、そして形の良い唇は紅をさしていないのに妖しいほど赤かった。
普通に美人だ、元い、かなり美人だ。
力自慢の鬼、もっとゴツい顔だったはずだと思い込んでいた。
よくよく見れば『ごめんなさいでした』と言うほどの美人だった。

「なんだ? 私の顔に何かくっついているのか?」

「いや、その、その髪、洗ってやろうか?」

「んー、遠慮する、自分でやるよ。
パルスィは私の髪を気に入っているんでね。
他人に触れられたくはない、かな?」

「ふん、好きにするといいさ」

動揺を気取られないようになんとか誤魔化す。

「オマエ、よく見ると傷だらけだな。
それも変わった傷が多いな」

勇儀が別の話題を振ってきた。

「仕事柄、切った張ったの荒事とは違う傷のつき方だからね」

長年の探索行で受けてしまった傷。
火傷痕、擦過傷、穿孔痕、ほとんど目立たなくなってはいるが消えてはくれない。
でも、寅丸星はこの傷さえも愛おしんでくれる。
だからナズーリンは、まったく気にしていない。

「私とはくぐってきた修羅場の種類が違うんだろうな。
だが、傷の数と状態を見れば分かる、オマエが歴戦の猛者である証だ。
やっぱり大したもんだ。
……これでもオマエのこと、少しは認めているんだからな」

口の悪い鬼の大将から予期せぬ賞賛。
ナズーリンはびっくりした。

「あ、ああ、そりゃどうも」

「しっかし、オマエは育っていないなー。
そんなんじゃ、食指がまったく動かんぞ」

「な!? ほ、放っておいてくれよ!」

さんざん持ち上げられてから落っことされた。

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