紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! 旧地獄のズバット(8)

翌日、慧音と妹紅は勇パルにつれられ史跡巡り。
ナズ&星は地霊殿へ向かった。

「ご主人、古明地さとりは【覚り妖怪】だからね」

「存じておりますよ、言葉に出さなくても相手の考えていることが読めてしまうんですよね?」

「そう、つまり、隠し事はできないと言うことだね」

「え……で、では、私がナズーリンのことをどれだけ好きなのか知られてしまうのでしょうか?
は、はずかしーー」

「ご主人……」

素で言っているからこそ質が悪い。
可愛すぎる。

「心を読んでトラウマを暴き、悪夢を蘇らせる。
力業では対抗できないとても厄介な攻撃を仕掛けてくる」

「そんなあ……」

「まぁ、心配は要らないよ。
ご主人の本来の【心】は神槍をもって戦うときくらい強いからね」

「そうでしょうか……」

寅丸星は裏表が無く、明朗なお人好しだが、これまでに何度も傷つき、何度も壊れかけたトラウマだらけの精神の持ち主でもある。
覚り妖怪なら付け込む隙だらけだ。

高位の武人である寅丸星は、明鏡止水の心を保てるのだが、それはあくまで戦闘時の話。
このヒト、オンオフが妙にハッキリしていて、普段はポカポカとゆるーい心を丸出しで暮らしている。
その精神を攻められたらかなりヤバいかも。

だが、この脆そうな心は決して砕けないだろう。
厳しく優しく支えてくれる【絶対一】の存在があるから。
だが、依存ではない。
生ある限り共に在り、相互補完を約したパートナー。
ナズーリンへの信頼は自己肯定よりも遙かに強い。
つまり、今の寅丸星の心はナズーリンが在る限り、根幹部分は絶対不滅なのだ。

そのあたりのことは、お互い、十二分に分かり合っている。
ナズーリンだって心の支柱には【寅丸星 命】とデッカく刻印されているのだから。
分かっている。
分かっているからこそ言いたい。

(これほど想いが通じているのに【B】止まりって……
おっかしいーだろおおーー!? なぜだあーー!!)

ナズーリン 流す涙に 血が混じる(五七五)。

古明地さとりは客を待っていた。
先刻、星熊勇儀からの使いがあった。
命蓮寺の寅丸星とその従者が訪れると。
他者との接触を好まないさとりだが、最近その寺には妹のこいしが頻繁に出入りしていると聞く。
ふらりと帰ってくるこいしが楽しそうに寺での話をする。
ならば挨拶くらいはしておこう。

「さとり様、お客様が見えました」

地霊殿の主が最も信頼するペット、火焔描 燐が来客を告げた。

入室してきた寅丸星らしき女は噂よりも大きく見えた。
背筋がシャンと伸びていて、振る舞いが堂々としているからだろう。
元は妖獣だときくが、ハッキリとした目鼻立ちに柔和な面立ち、地底ではお目にかかれない陽性の美しさがある。

『ご主人はいつも通り自然体で良い。
【覚り妖怪】程度に怯むことなどないよ。
……星、キミの心は誰にも恥じることは無いんだから』

覚り妖怪相手ということで訪問前には少々慌てていた寅丸星だが、この世で最も頼りにしている従者から力強く告げられ、持ち前のポジティヴシンキングを取り戻していた。

「命蓮寺の寅丸星と申します」

「古明地さとりです。
妹がお世話になっているそうでお礼を申し上げます」

「こちらこそ、こいしさんのおかげで寺も賑わっております」

「ご迷惑をかけていませんか?」

「いえいえ、全然」

この辺は社交辞令。

「こちらは私の従者、ナズーリンです」

(従者?……寅丸星の心は恋人と言っているわね。
うわ、甘っ、熱っ、これはちょっと恥ずかしいくらい。
ホントに【ナズーリン】が好きなのね)

寅丸星に【アクセス】したさとりは、そのオープンストレートな思考に面食らった。

『ナズーリンはスゴいんですよ! 素敵なんです!
私、大大大好きなんです!』

ツッコむ隙の無い剛速球をドッカンドッカン投げてくる。
さとりは堪らず【コネクト】を解除した。

(まいった、こんなに純粋な想いって久しぶりだわ……)

「こちらにはとってもたくさんの動物がいるのですね」

「ええ……寅丸さんは動物、好きなんですね」

「はい、大好きです!」

妖獣の頃は捕食する側の頂点にいた寅丸だが、仏門に入ってからは教えに沿って衣食住が改まり、他の獣に対しての感覚も変わっていった。
今では大の動物好きだ。

「私も動物が好きです」

二人、ひとしきり動物談義に花が咲く。

「ご主人様、地霊殿を見学させていただいては?
古明地どの、いかがでございますかな」

二人のやり取りが途切れたタイミングでナズーリンが提案した。

「結構ですよ……お燐、寅丸さんをご案内してあげなさい」

「かしこまりー」

「お燐? 最近言葉使いがおかしいわよ?」

このところ頻繁に地上に遊びに行っているお燐とお空。
いちいち心を読むことはしなくなっているから分からないが、なにやら妙な影響を受けているような気がしてならない。

「ご主人様、どんな動物がいたか、あとで教えてね」

ナズーリンが主人に囁いた。

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