紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

なじゅーりん! 〜真夏の夜の夢〜(2)

「ごしゅじんたま、おみみ、おみみ」

二人と別れた後、ナズが嬉しそうに話しかけてきました。

内緒話をするからしゃがんで耳を貸してくれという意味です。

「あのね、ひじりたまはワッタシと二人でいるとき、ぎゅってしてくれるんです。

ごしゅじんたまみたいに。

でも、ないしょなんです。

だって、みんながぎゅっとしてって言ってきたら、こまっちゃうからだそうです」

聖もナズーリンをとても可愛がっています。

「内緒なのに私に話してしまって良いんですか?」

はっとするナズーリン。

「あ、ご、ごしゅじんたまは良いんです!

でも、でも、ワタッシが話したって、ないしょにしてくだたい!」

困り顔も可愛いー。

「あらー。どうしましょうか?」

「ごしゅじんたま! お、お願いです! ないしょにしてくだたい!」

泣きそうな顔、たまりません、ふうー、罪深い楽しみです。

「はい。内緒にいたしましょう」

「え? ホント? よかったー。 ごしゅじんたま、ありがとーございます!」

あう、私、地獄に堕ちるかも。

一輪は朝一番で雲山とともに寺の周りを入念に見回ります。

たまに行き倒れて死にかかっている妖怪がいたりするからです。

ムラサ船長は通いでやってくる妖怪たちに掃除の段取りや朝課の支度を差配しています。

私は参詣に訪れる方々に振舞う汁物を用意します。

少し恥ずかしいのですが【命蓮寺の名物】の一つなんですって。

ナズーリンは私のお手伝いです。

前日のうちに二人で食材を用意し、作る段取りも確認してあります。

段取りを説明すると、ナズは食材と使う器具をきっちり指さし確認してくれます。

【赤ナス20こ! タマネギ7こ! ジャガイモ8こ! きゅうりは10ぽん!

大なべよし! すりばち、すりこぎよし! おわんもよし!

あ、にんにくもりんご酢もだいじょーぶです! 氷もこんだけあればよしです!

でも、お塩が少なくなってます! 明日、かいにいきましょー!】

しっかり者です、ホント助かります。

今日は朝から暑くなることが分かっていましたので和風ガスパチョです。

酸味のきいた冷たい野菜スープはこんな朝にぴったりで元気が出るはずです。

赤ナスとタマネギ、ゆでたジャガイモはすり鉢ですりつぶし、キュウリだけは細かい角切りにしてアクセントにします。

ナズは野菜をせっせと運んでいます。

私が仕込みをしているのを嬉しそうに眺めています。

味見をさせると、いつもどおりに顔を綻ばせ、

【おいっっしー! ごしゅじんたま、おいしーです!!】

満面の笑顔をくれます。

はあああ、私、この世の【シアワセ】を独り占めにしています。

朝、参詣者の方々とご挨拶、ナズはここでも人気者です。

「みなさん! おはよーございまーす!」

「おはよう、ナズちゃん、今朝も元気で気持ちが良いね」

「おヤイさん、おはよーございます! 足のぐあい、だいじょーぶですか?」

「ありがとう、だいぶ楽になったんだよ。ナズちゃんは優しいねぇ」

「ヒロスケさん、おはよーございます! 今日はおとーふ買いに行きますから、よろしく!」

「そうかい! よーし、とびきりのを用意しておくからな!」

「あれー? おとーふって、いっぺんに作るんでしょ?

教えてくれましたよね? どうーやってワッタシにのだけとびきりになるんですかー?」

「おっと、ナズちゃんは賢いなぁ〜、まー、心意気ってヤツさ!

それより転んでこぼすなよ!?」

「もー! そんなこともうしまてん! ワッタシ! シッカリしてるんですから!」

ぷんぷんしているナズは大勢の優しい笑い声に包まれています。

ダルマの模様の帯留めを水屋箪笥の中に隠します。

ナズには【探し物を探し当てる程度の能力】があるそうです。

あるそうです、と言うのは、実はよく分からないからなんです。

でも、自分の能力に自信と誇りを持っているようです。

「ナズーリン、申し訳ありませんが、探しものをお願いしたいのです。

帯留めを無くしてしまいました、ダルマの模様のなんですけど」

「ごしゅじんたま、またですかー?

しかたありませんねー、でも、なじゅーりんにおまかせです!」

腰に手を当て【やれやれこまりましたねー】の顔をしながらもとても嬉しそう。

探しものを頼まれることが一番嬉しいみたいです。

小さなダウジングロッドを取り出し、真剣な顔で右回りに少しずつ動いています。

なにか気づいたらしく慎重に歩き始めます。

そっちじゃないんですけどね。

しばらく見当違いのところをウロウロと探し回っていましたが、

「うーん、こっちじゃありませんね」

そう言って庭に出ようとします。

あらあら、これではいけません。

『外には持って行っていません』

『自分の部屋にはありませんでした』

『食事の支度をしているときになくなったかも』

『お台所のどこかかも』

順番にヒントを出して誘導します。

ようやく水屋箪笥の中を調べるナズーリン。

「あ、あったー!! ありましたよー!!」

「まあ、こんなところにあったなんて! ナズーリン、ありがとうございます!」

「探しものならなんでもおまかせくだたい!」

えっへん! と胸を張る小さなダウザーさん。

いいことだとは思いません。

ナズのためにならないとは分かっています。

でも、ナズが嬉しそうで、そして、なんだかホッとしているように見えるんです。

だからやめられないんです。

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