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なじゅーりん! 〜真夏の夜の夢〜(3)

ナズと二人、人里での用事が思ったより長引いてしまいました。

お昼はどこかの食事処でいただきましょう。

今日のお寺の昼食は一輪がやってくれるはずですから、たまにはいいですよね。

「ナズーリンはなにが食べたいですか?」

「ワッタシはおそばがいいです!」

最近作っていませんでしたものね。

「そうですね、では、おそばをいただきましょう」

「はいっ!」

近くのお店の暖簾をくぐります。

お昼時も終盤で空席の方が多いくらいです。

「いらっしゃーい、お席、お好きなところへどーぞー」

「ごしゅじんたま! こっち! こっちがいいです!」

私たちの風体もそうですが、元気のよいナズーリンは店内の注目を集めます。

ぱたぱたと手招きする従者さんは、一番奥の席を勧めています。

ナズは隅っこを好む傾向があります。

やっぱりネズミさんだからでしょうか。

ナズの決めた席に座ります。

すると、椅子に腰掛けた私に、んしょ、んしょとよじ登ってきました。

膝に座って、ふーっと一息ついています。

「ナズーリン? どうしました?」

私の呼びかけに振り返り、きょとんとしています。

お互い見つめあったまま呼吸三つほどの時間が過ぎます。

ナズが、はっとしました。

「あ、お寺じゃなかった・・・・・・」

慌てて膝から降り、向かいの席に移りました。

お澄まし顔ですが真っ赤っかです。

お箸がようやく使えるようになったナズですが、寺で食事する時、たまに私の膝に乗って一緒に食べることがあるんです。

私は構わないのですが、さすがに他人様の目があるところではよろしくありませんよね。

でも、恥ずかしがるってことは、少し大人になったってことかしら。

今日は細かい買い物が多く、両手にいっぱいの荷物です。

ナズは自分にも持たせろと盛んに言いますが、ちょっと危なっかしいです。

持ちます、大丈夫です、押し問答になりかけたところで気づきました。

ナズの口元が尖り始めています。

いけない、不機嫌一歩手前の顔です。

結局、お塩の入った小さな包みを持ってもらいました。

そうしたらようやくいつものご機嫌顔で、

【おやくにたちます!】

いつもの決めゼリフです。

よかった。

実は、ナズーリンへの贈り物をこっそり持っているんです。

可愛いネズミとトラの顔が刺繍されている明るい朱鷺色の巾着。

なんでもかんでもスカートのポケットに突っ込んでいるナズに小物入れを贈りたかったんです。

今は見つかるわけにはいきません。

お寺について、社務所を除くと一輪とムラサが休憩していました。

「いちりんさん、ムラさん、ただいまー!」

【ムラサさん】と言いにくいようです。

「おかえりナズーリン、アメちゃん、いる?」

「ナズーリン、こっちにおいで。お饅頭食べようか」

「わー、ありがとーございます!」

ナズを取り合うように誘い掛けるお寺の重鎮二人。

二人ともナズーリンに甘いんです。

お夕飯が食べられなくなっちゃいますよ。

今日は小傘ちゃんが来ているそうです。

「ナズーリン、小傘ちゃんがきていますから遊んでいらっしゃい」

「で、でも、ワッタシは、ごしゅじんたまのお手伝いをしまてんと……」

ホントは遊びたいんでしょ? 分かってますよ。

だから、ちょっと言い方を変えます。

「せっかく、来てくれたのだから、誰か構ってあげませんとかわいそうですね。

ナズーリン、小傘ちゃんと遊んであげてくれますか?」

そう言われてちょっと考えていたナズですが、やがて顔が、ぱぁーっと輝きました。

「そ、そーですよね! わっかりました! しかたありまてん! ワッタシが遊んであげましょー!!」

そう言って、ぱたぱたと駆け出しました。

はぅふーー、なんて良いコなんでしょう、たまりません。

買ってきた食材の整理を終え、裏庭に出てみます。

ナズーリンと小傘ちゃんが遊んでいるはずですから様子を見てみます。

きゃっきゃっとはしゃぐナズーリンの声が聞こえてきました。

「いつもより余計に回しておりまーす!!!」

小傘ちゃんの大きな声が聞こえます。

覗いてみると、いつも持っている大きな傘を開いたまま、くるくると回しています。

その傘の上でころころ転がっている大き目の手鞠。

へー、上手いものですねー。

あら? ナズは? どこにいるの? 見あたりませんね?

嬉しそうにはしゃぐ声がすぐそこで聞こえるのに。

よく見れば傘の上で転がっている鞠はナズーリンではありませんか!

あ、あ、なんて危ない!

でも、いくら小さいナズでもあんなに小さくありません。

目の錯覚でしょうか?

それとも妖術の類なのでしょうか?

きゃっきゃっと楽しそうな声。

小傘ちゃんがぽーんとナズを跳ね上げ、落ちてきたところを片手で掴みました。

やっぱり小さいです。

小傘ちゃんの手からポロっと落とされた手毬が、地面に付く間に、いつものナズーリンなりました??

なんなんですかー!?

「あ、ごしゅじんたまー!」

私、いつの間にか駆け寄っていました。

「寅丸さーん、おじゃましてまーす!」

「え、あ、こ、こんにちは」

小傘ちゃんへの挨拶もそこそこにナズーリンに尋ねます。

「あの、ナズ? アナタ、どうやって小さくなってるんです? 」

「ふー、目が回りましたー。 え? ちちんぷいぷいってやると、小さくなれるんです。

えーと、ちょっとのあいだしかできまてんし、つかれちゃいますけどへーきです」

「そ、そうなんですか? 知りませんでした」

やっぱり妖術みたいです。

このコには、たまにビックリさせられます。

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