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なじゅーりん! 〜真夏の夜の夢〜(5)

困りました。

【おゆーはんは、いりまてん】

ナズーリンは自室に篭って出てきません。

仕方ありません、後で何か持っていきましょう。

「ナズーリン、入りますよ? おなか減ったでしょう?」

返事はありませんが、ご飯を食べないのはダメです。

鍵がかかるわけもない襖を滑らせます。

座って俯いています。

「ねぇ、ナズーリン? たまにはうまくいかないこともありますよ。

元気を出してください、ね?」

私の声にゆっくりとこちらを向くナズーリン。

空ろな目。

なんだか嫌な予感です。

「さっき、【おやかたたま】からお話がありました」

ナズが【お館様】と呼ぶのは毘沙門天様です。

滅多なことでは干渉してこないナズーリンの本当のご主人様。

少し間があって、ナズの顔が歪みはじめました。

「か、かえって、こいって」

どこへ?

「【おやかたたま】から、オマエは【とらまるしょう】のやくにたっていないから、かえってこいって言われました」

ぽろぽろと涙をこぼすナズ。

ちょっと待ってくださいよ! なんですか! それ!

「さようならごしゅじんたま、なじゅーりんはかえります、ごめんなたい、やくにたたなくてごめんなたい」

待って! 私に一言もなくそんなこと決めるなんて!

いくら毘沙門天様だって許しませんよ!!

ナズがどれほど私の役に立っているか、いえ、ナズがいるからこそ私は頑張れるのに!

何を見ていらっしゃるんですか!?

本当に分かっていらっしゃるんですか!?

「でも、ワッタシは、なじゅーりんは、ごしゅじんたまがだいすきです! だいっっすきです!!

かえりたくありまてん!!!!」

「帰らなくていいです! ずっと私と一緒です!」

「ごしゅじんたま、だいすき…… でも、かえらなくちゃ……」

そう言いながらナズがどんどん遠ざかっていきます、なのに体が動きません!

「待って! いかないで!!

いやー! ナズー! まって、まってーー! もどってきてー なじゅーーりーーんーー!!!」

『ごしゅじんたま、ごしゅじんたま、…… ……ご主人! ご主人! しっかり!』

私を覗き込むナズーリン、ずいぶんと落ち着いた声です。

あ、あら?

「ご主人、大丈夫かい? かなりうなされていたぞ」

「ナズ? なじゅ?」

「なじゅ? どうしたんだ?」

いつもの私の居室。

眠っていたんですか……

心配そうに見つめるナズーリンは【いつものナズーリン】。

「悲しい夢を見たのかい?」

【大人びたナズーリン】が優しく問いかけてくれます。

私は小さく頷きます。

「悲しい夢はヒトに話すことで心が軽くなると言うよ。

私でよければ聞いてあげよう。どうだね?」

いつものナズーリンはいつものように優しいです。

「笑わないって、呆れないって、約束してくれますか?」

「うん、約束しよう」

なじゅーりんの夢を話すことにしました。

何でそんな顔しているんですか?

確かに笑いも呆れもしてませんが、美味しくないものを無理矢理飲み込んだ後のような表情。

そんなに変な夢でしたか?

「ご主人、その夢は私に対しての願望なのかな?」

「そう言うわけではないと思うんですが、分かっています、夢だったんです!

でも、なじゅーりんが、【ごしゅじんたま】って、う、ううう」

泣けてきました。

私、バカです。

「ごしゅじんたま?」

へ? なじゅ?

【いつものナズーリン】が目をいっぱいに開いて可愛らしい声でささやいていました。

「どうしたんですか? ナズ?」

きょとんとしてしまいました。

「くっ! なんだよ!! 私の気も知らないで!」

「なんで怒ってるんですか?」

「ご主人の鈍さにいささか頭にきただけだ!」

えええー? なんだか、よく分かりませんよー??

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夢オチでした。
すいません。時間がかかったわりにロクでもない話でした。しかしながら、これも一つの可能性、あるいは真夏の夜の夢ってことでご笑納下さい。ダルマの模様の帯留めは【トンコ節】からです。……古すぎますか……海老一染之助・染太郎、大好きだったんです。メールフォーム東鼠通信のコメント欄にご感想、ご指摘などをいただけましたら、幸いです。

紅川寅丸

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