紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! 最低です!(1)

夢オチの第二弾です。ナズーリンが最低野郎です。
他のキャラの扱いがちょっと酷いです。もう一度言います。夢オチです。最低です。これまでのお話とは独立しております。伏線もありません。

それでもいいか、と言う方はおすすみください。

「ナズーリン、ナズーリンはいますか?」

私が声をかけると襖が静かに開き、

「ご主人様、ナズーリン、ここに」

女性にしては低く、張りのある声とともに私の従者が入ってきました。

「予定通り里に出かけます。支度を手伝ってください」

「かしこまりました」

長身痩躯の従者は切れ長の目を少し伏せ気味にして答えます。

ナズーリンは女性のネズミ妖怪です。

少し憂いを帯びた涼しげな目元、整った鼻梁、薄い唇。

思わず見とれてしまうような美形ですが、美人というより、【二枚目】といった方がしっくりきてしまいます。

もう一度言いますが女性です。

成熟した女性の落ち着いた雰囲気と、ちょっと危ない男性的な香りが混ざり合って、困った魅力を醸しているんです。

人妖を問わず、ナズーリンに向けられる妙に熱い視線に、私は落ち着かない気持ちになってしまいます。

私の従者なのに。

私の【モノ】なのに。

膝をついて私の部屋着を脱がしていくナズーリン。

下着だけになった私を見ても眉一つ動かしません。

確かに成長途上の私は、小傘ちゃんより少し小さいです。

ですが、胸も膨らみ始めましたし、お腹のぽっこりもへこんできてるんです。

【女性のカラダ】になりつつあるんです。

なのにナズリーンったら、完全スルーなんです! 面白くありません!

以前、意を決して『私に興味がないんですか!』って聞いたら、

『仕える主として、興味ではすまないほどの情熱を持っています。

なんとなれば、ご主人様あっての私でございますから』

あまりにあっさり言うので頭にきて、

『そういうことじゃありません! 女としての私に興味があるかって聞いたのです!』

少し困った顔で薄笑い。

『おかしなことを聞かれますね? 私はこれでも女性ですよ?

その類の趣味はございませんので、お答えしかねます』

しれっと言い捨てましたが、私は知っています、ウソです、絶対ウソなんです。

【タラシ】で【コマシ】で【スキモノ】で【オンナノテキ】なんです!

詳しい意味は知りませんけど、そうなんです!

あちらこちらで可愛くて綺麗な女性にちょっかい出しているんです! 最低なんです!

「星、気を付けてね。ナズーリン、星をよろしくお願いします」

聖が出発前に声をかけてくれました。

なんとなく私よりナズーリンに重心が寄っているような気がしちゃいます。

気にし過ぎだと分かっているんですが、どうにも面白くありませんよ。

てくてく歩く私の後ろをゆっくりとついてくるナズーリン。

まだ妖力の小さい私は空を飛ぶとかなり疲れてしまうんです。

短めの上着に、【錆鼠】色のぴっちりとしたパンツルック、細くて長い足が一層強調されています。

もっと明るい色も似合うと思いますが『従者がご主人様より目立つわけにはまいりませんから』といつもシックな格好です。

でも、どんな格好をしていても十分目立っているんですけどね!

里の入り口が見えてくるあたりで脇の木立から声がかかりました。

「やあやあ、こんちわ、奇遇だねぇ」

大きな鎌をかついで歩み寄ってきたのは死神の小野塚小町さんです。

「そこのネズミのお姉さん。

話があるんだ、ちょっと顔を貸してくれないか?」

こんなところで会うなんて本当に奇遇ですが、お仕事はどうしたんでしょうか?

大柄な小町さんですが、それでもまだ少し背の高いナズーリンを見上げながら言います。

口元は笑っていますが、目は笑っていません。

「ご覧の通りご主人様と使いの途中だ。

仕事を”サボる”わけにはいかないのだがね」

ナズーリンが平坦な声でもっともなことを言います。

「なーに、手間は取らせやしないさ、ご主人さん、いいだろ?

少しの間だ、アンタの従者を貸しておくれよ」

そう言って私に向けた目線はとても強いものでした。

なにか曰くがありそうですね、気になります。

「いいでしょう。

ナズーリン、あの方のお話を聞いてあげなさい。

私はここで待っていますから」

ナズーリンを睨み付けながら許可を与えました。

「ご主人様からお許しをいただけたので少しだけつきあおうか」

そう言って小町さんを目で促し、二人して木立の中に入って行きました。

姿は見えなくなりましたが、このくらいの距離なら全部聞こえちゃいます。

だって私、とても耳が良いんです。

これでも五感が鋭敏な補食系の妖獣なんですから。

「あたいの唇を奪っておきながら、その後、まったく音沙汰なしってどういうつもりだい?」

強い口調の小町さん。

やれやれ、また、こんな話ですか。

予想はしていましたけど。

それに対しナズーリンは、

「何故キミは怒っているんだ?」

いたって落ち着いた声。

「はあ? アンタ頭おかしいのかい!? 何で怒っているか分かんないっていうの!?」

「ああ、分からないね、私はとても嬉しいのに」

「え? 嬉しいって……やっぱりアンタおかしいよ、言ってること、全然意味分かんないよ」

小町さんの口調が少し不安気です。

「キミを想わない夜は無い。

だが、務めのある身、キミの仕事場へ行くこともかなわなかった。

我慢していたのだ。

そして今、偶然にもキミに会えて私がどれほど嬉しいか」

「……ホントかい?」

「それなのにキミは怒っている。

意味が分からないのはこちらの方だ」

不機嫌そうなナズーリンの声、務めって私が悪いんですか?

「いや、そ、それは、その……。

だって、アンタ、さっき、迷惑そうな顔してたじゃないか」

「仕事中の顔というものがあるさ、キミだってそうだろう?」

「そ、そりゃそうだけどさぁ。ねえ、なんでアンタが恐い顔してるのさ?

あたいの方が悪いって言うの?」

「そうだ。キミがいけないのだ」

「あ、あたいが悪いの?」

小町さん、問題がすり替えられてますよー!

騙されてますよー!

「もう我慢できない。私の想いを受けてみるがいい」

「ん!? んん!!」

がらん、と金音、大鎌を落としたんでしょう。

そしてきっと唇を……。

しばしの間、小町さんのくぐもったうめき声しか聞こえてきません。

やがて、

「も、もう許してぇ、あ、あたいが悪かったよぅ」

「ダメだね、私は満足していない」

再びくぐもったうめき声、時折、力のない嬌声が混じります。

「私の想い、伝わっただろうか?」

ナズーリンの問いかけに返事はありません。

ただ荒い息遣いだけ。

……最低です!

[扉絵]  [小説TOP]  [↑]  [→]

PAGETOP
Copyright © 2011 東鼠回顧録 All Rights Reserved.