紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! 最低です!(2)

「ご主人様、お待たせをいたしました」

なに食わぬ顔で戻ってきたナズーリン。

きっと私が聞いていたかどうかなんて気にしていないのでしょう。

でも、一応聞いてみます。

「小町さんはどうなさったののですか?」

「なにやら誤解があったようですが、順を追って説明したら納得してくれました。

問題ありません」

なにか言ってやろうかと考えていたのですが、頭の中がぐるぐるしていて、結局、歯を食いしばったまま、

「そうですか」

としか言えませんでした。

里に入ったところで、ちょっと先を歩いていたウサギ耳の娘さんが振り返りました。

鈴仙・優曇華院・イナバさん、通称鈴仙さんです。

永遠亭一番の働き者で、ブレザー、ミニスカートがキュウトな美しい娘さんです。

大きなつづらを背負っていますから、薬を売りに来たのでしょう。

こちらに気づくと、そのまま近付いてきました。

「ナズーリンさん? どうしてこんなところにいるんですか?

まさか、約束を破るつもりではないでしょうね?」

口を尖らせてナズーリンに詰め寄ります。

私のこと無視ですね? まぁいいですけど。

【約束】の内容が気になりますが。

「鈴仙どの、久しいね。元気だったかい?

相変わらず綺麗だな」

少しおどけた風のナズーリン。

「とぼけるつもり!? 姫様には手を出さないでって言ったでしょ!」

姫様って、蓬莱山輝夜さんのことですかね?

「何か勘違いだと思うが?

今はただのお使いだよ。

キミとの約定を違えるつもりはないのだがね」

だから【約束】ってなに!? 気になるじゃないですか!

でも、きっとロクでもないことですよね。

そんなのを目の前で聞かされるのはとってもイヤな感じです。

ご免こうむりますよ。

「ナズーリン、私は先に行きますからね!」

返事を待たず、さっさと歩き出します。

その場から離れながらも話は聞こえてしまいます。

鈴仙さんがたずねます。

「本当に姫様には手を出さないんですね?」

「そのためにキミは対価を払ったんだろう?」

「そうだけど、アナタが本当に約束を守るかどうか、怪しかったし……」

対価って、うーん、多分ああいうことなんですね。

「まぁ、あの【対価】にその価値があったかどうか、微妙だがねぇ」

とってもイヤラシい声で答えるバカ従者、きっと薄笑いを浮かべていますよ。

「な、なんですって!! 足りなかったって言うの!?」

姫様のために、一晩アナタのモノになったのに!」

……やっぱりそういうことですか。

最低です。

きっと主である輝夜さんを盾に鈴仙さんを誑かしたんです!

その上、【微妙】だったなんて、失礼すぎますよ!

「まぁ、約束だからね。キミのお姫様には一切関わらないよ、多分ね」

「多分ってなによ! やっぱり足りなかったって言うの!?

私じゃ満足できなかったって言うの!?」

ほとんど泣き声。

なのに最低ジゴロが澄まして言います。

「冗談だよ、たっぷり堪能したさ」

「うー、なんなのよ! その言いぐさ!」

まったくもって最低な女の敵です!

「おっとと、言い方が悪かったね。

私が悪かったよ、【姫様】には関わらないと改めて約束するよ」

少し口調が柔らかくなったナズーリン。

「ホントね!?」

「ああ、本当だ」

「ホントにホントね!?」

「ふふふ、随分とくどいな。

キミとは一夜だけと約束しただろう?

後は一切、関わりを持たないと。

信じて欲しいな」

「そ、そうなんだけど、……アナタがもし【対価】が足りなないからって約束を破ったら困るし……」

「ほう? ではどうするつもりなのかね?」

「……もし、足りないのなら、もう一晩だけ私を好きにしていいわ、あ、あと一回だけよ!

だからそのかわり姫様はあきらめて!」

「ふむ、つまり私が『あきらめない』と言えば、キミは何度でも抱かれる覚悟があるということだね?」

「え? いえ、その、そんな……ええ、そうよ! だって姫様のためだもの!」

あのー、鈴仙さん? 貴方、ご自分の欲求を正当化するのにかなり遠回りですね。

「健気な従者さんだ。仕方ない、キミで我慢するか」

「が、我慢ですって!? ……そんな、ひどい!! うっう!」

鈴仙さんの気持ちを知った上でいたぶるような物言い! 最低!!

しゃくりあげている鈴仙さん、少しの間をおいてタラシネズミが、

「鈴仙どの」

「なによ!? 離してよ! ううう」

「いや、離さない。からかって悪かったね。

キミがとても可愛いから、つい、意地悪をしてしまったのだ」

「可愛い?」

ナズーリンの声が甘くなってきました。

危険です! 鈴仙さん、気をつけて!

「私の気持ちを正直に言おう。

あの夢のように素晴らしい一夜を忘れることができなかった」

「……え? そ、そうなの?」

「素晴らしすぎた。

人生観が一変してしまった。

しかし、キミは一夜だけだと言った」

「だって、だって、……や、約束だったから」

「これが最初で最後なんて我慢できなかった。

だから、もう一度キミを抱くにはどうしたら良いか。

そのことをずっと思案していた」

「へ? そんな……ウソばっかり」

「まったく、キミは疑り深いな」

「だって、だって、ナズーリンさん、ヒドいこと言うんだもの」

「ふふふ、そうだね、お詫びをしないといけないな。

今夜、いいだろ?」

「いいだろって、な、なにが?」

「じらすつもりかい?

ならば、はっきり言おう。

もう一度、いや、何度でもキミを抱きたいのだ」

ばかナズーリン! はっきり言いやがりましたよ!

スケベのカタマリー!! 最低のさらに最低!!

「う、うん! あの、前と同じ場所でいいの?」

なーんで、嬉しそうな声なんですか!

バックリ騙されているのに!

なーんで、分からないんですか!

「ああ同じ場所、同じ時刻で良いよ。

でも、同じじゃないことがあるよ」

「なにが違うの?」

「キミの気持ちを知ったからには全力を出すってことさ。

以前の夜がお遊戯と思えるほど激しく責め立てる。

私の本気を受け切ってもらう」

「え!? あのときよりももっとスゴいの!?」

「そうだ、覚悟しておきたまえ」

「は、はひ!」

[←]  [小説TOP]  [↑]  [→]

PAGETOP
Copyright © 2011 東鼠回顧録 All Rights Reserved.