紅川寅丸とTeam東方不敗の作品やご案内

ナズーリン! 最低です!(4)

「ナズーリン、私は気分が優れませんので先にお寺に帰ります。貴方はここで休んでから戻ってきなさい」

「ご主人様、お一人はよろしくありませんよ」

「飛んで帰りますから心配は無用です」

また返事を待たずに飛び立ちます。

ほんの少しの期待、追いかけてきてくれるのではと。

きません。

やっぱり。

少し迂回して茶屋が見える店の脇に隠れます。

その場にいるのはイヤですけど、気になりますから。

先ほどの小町さんや鈴仙さん、確かに腹が立ちますが、十六夜咲夜さんはなんとなく別格のような気がするんです。

お遊びではすまないような、とても危険な感じがするんです。

「咲夜どの、こんにちは」

ナズーリンの挨拶に少しだけ首を傾げる咲夜さん。

「貴方は確か、命蓮寺の方でしたね?」

「相変わらずツレませんね、ご存知のクセに。ナズーリンでございますよ」

「失礼いたしました。どうも覚えが悪いものでして、お許しくださいね」

「ははは、そのくらいではめげませんよ」

ナズーリンを忘れられるはずがないのに。

でも、これでハッキリしました、咲夜さんも実は意識していたんですね。

「お隣、よろしいか?」

「どうぞお好きに」

咲夜さんの隣に腰を下ろすナズーリン。

「ナズーリンさん、でしたっけ? 貴方のご主人様は放っておいてよろしいのですか?」

「休憩の時間をいただきました。したがいまして、今の私はしがないただのネズミの妖怪です」

「そのネズミさんが私にご用でしょうか?」

「貴方が欲しいのです」

直球、ど真ん中にピクッと眉を吊り上げた咲夜さん。

「おっしゃる言葉の意味、理解しかねます」

「貴方のカラダも心も私のモノにしたいのです」

二球目もど真ん中。

「お戯れを。いけませんよ、ナズーリンさん、私は使用人の身です」

「私も同じです。同じ立場同士、自在な時は限られていますから無駄にしたくない。

つかの間の逢瀬にすべてをかけたいのです」

「私はまだ、自由時間ではありませんよ? 仕事中です」

冷たく突き放す咲夜さん、でも、ナズーリンは気にしていません。

「幻想郷にきてから、貴方しか目に映らないのです。

数千の年月を経て、ついに最高の相手に出会ったしまったのですよ」

数千年で最高って、わ、私は?……

「貴方を手に入れるために私は生まれてきたのです。

いまさら諦めるつもりなど無い」

「お嬢様がお許しくださいません」

「私が許しましょう。

それなりに自重していたのですが、これほどの至近で白金の月を見てしまったのです。

どんな困難も些細な障害に過ぎません、私は乗り越えます」

「なんとも勇ましいこと」

「貴方の美しさにはそれだけの価値がありますから。

お望みなら、何日でも語りましょう、宇宙すら支配できるその美貌を」

「ふふふふ……あら、時間だわ」

咲夜さんの言葉に残念そうなナズーリン。

私も少しほっとするやら、残念やら、とても複雑です。

「これより私の自由時間です」

え? 咲夜さん、なんのことです?

「私自身が決めている自由時間、開始と終了は私なりのけじめかしら?」

咲夜さんの声が少し低めになり、艶をおびています。

「フフッ、アナタ、この私を満足させる自信があるのかしら?」

先ほどまでとは打って変わってくだけた口調。

なにかが【切り替わった】のでしょうか。

ナズーリンはニヤリと笑いました。

状況が分かったみたいです。

「キミの言うところの【満足】とやらがどの程度のものかは知らん。

だが、その【満足】がいかにヌルいかは教えてやれる」

「すごい自信なのね」

「自信ではない、揺るぎようのない事実なのだからね。

どこまでついてこれるかはキミ次第だが」

「面白いわ。これからの一刻ほどでどこまで連れて行ってくれるのかしら?」

「一刻もあればお釣りがくるさ。 今の私は手加減ができないからね」

「楽しみね。 さ、時間が惜しいわ。 早く連れて行ってよ」

ナズーリンの手を取って立ち上がる咲夜さん。

予想外の展開に暫し呆然としてしまいました。

そうなって欲しかったような、なって欲しくなかったような。

あああー! なんだか分かりませーん!

飛び立った私は命蓮寺へまっしぐらに進んでいました。

[←]  [小説TOP]  [↑]  [→]

PAGETOP
Copyright © 2011 東鼠回顧録 All Rights Reserved.