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ナズーリン! 最低です!(5)

自室で悶々としていた私にナズーリンが声をかけてきます。

「ご主人様、ナズーリン、戻りました。休息の時間、誠にありがとうございました」

何事もなかったかのようなその顔を見たら、想いが噴出しました。

「ナズーリン! 貴方は誰ですか!? 何者ですか!?」

私の剣幕にもまったく怯まず、

「私は寅丸星様の従者でございます」

「では! 私が言いつけたことはどんなことでも従うのですね!?」

「仰せの通りでございます」

「で、では、わ、わたしに口付けをしなさい!」

「それはご命令ですか?」

「そうです!」

ああー! 言っちゃいました! ついに言っちゃいました!

近寄って跪いたナズーリンが私を軽く抱き寄せ、そして触れるだけのキス。

あ、ふぁー

……え、これでお終い?

何か言おうとする私を目で制して、

「ご主人様にはまだ早うございます。しかしながら、ご成長なさった暁にはもっと大人の口付けを差し上げます」

とても優しい目。

「ホント?」

「無論でございます。ナズーリンは寅丸星様の従者でございますれば、ウソは申しません」

「私、信じていていいのですね?」

「まだご主人様はお小さい。

その時がくれば、文字通り、この身も心を捧げましょう。

私はそのために生きているのですから」

「だって、いつも他のヒトばかり……」

「お待ち申しているのです。

他のモノのことなどお気になさいますな。

それまでの無聊を慰めているのに過ぎません。全ては儚い泡沫(うたかた)でございます」

えと、そういうことで良いんでしょうか? なんだか分かりません。

でも、ナズがここまで私を想っていてくれるのなら構わないような気がしてきました。

「お忘れめさるな、私はご主人様、寅丸星様だけの忠実な従者でございます」

「わ、わたしだけの……」

「祭りのこと、聖どのに報告してまいります。お疲れでしょう? ご主人様はお休みなっていてください」

「はい」

素直に返事していました。

なんだかドキドキ、ぽかぽかして、ぼーっとしていました。

でも、聖への報告だったら、私も行かなくては。

ナズーリンにかなり遅れて聖の居室に向かいました。

居室の前で二人の話し声が聞こえます。

「いけません、貴方は星のために尽くしていただかないと」

「もちろん心得ております。日々務めておるつもりですが、至らないのでしょうか?」

「いえ、決してそんなことはありません。貴方はとても良くやってくれています」

「ならば、少しだけ褒美をいただきたいものです、さすれば更なる働きもできましょう」

「褒美と申しますと?」

「一夜の情けを頂ければ十分にございます」

「いけません、その手を離してください! 私は御仏に仕える身です!」

「存じております、私も同様の身ですから」

な、なんてことでしょう! ダメです!! 聖にまでなんて!

ばか! 最低! さっき私だけって言ったばかりなのに!!!

思い切り開いた襖の向こうは真っ暗でした。

「ご主人、おい、ご主人!」

「ばか、ばかぁ、ナズーリンのばかああ」

あたりが明るくなったと感じたら、ナズーリンが覗き込んでいました。

随分と幼い顔ですね……

あ……私、寝ていたんですか。

「ご主人、随分とうなされていたが、ばか呼ばわりには理由があるのだろうね?」

【いつもの】ナズーリンが難しい顔で見つめてきます。

でも、まだ頭がぼんやりしています。

「ナズは最低なんです! ばかなんです!」

「……ほう、もう一度聞くが、理由があるのだろうね?」

「だって、ナズはヒドいんです! 最低なんです!」

「うーむ、また、夢の話だね? 言いがかりも甚だしいが、聞かせてもらう権利はあるよね?」

ぽつぽつと夢の話をしました。

最低スケコマシの話を。

腕組みしたまま聞いていたナズーリン。

「……で、ご主人、私にどうしろと? なにを言えと?」

なんだかまだ頭がぼんやりしてますけど、

「謝ってくれればいいんです! ひたすら私に謝ればいいんです!」

「あのね、ご主人、ご自分がどれほどムチャクチャを言っているか理解できているのかい? できていないだろう?」

「ナズのばかっ! 最低! うわーーーん!」

私もよく分かりませんよー!

「もー、まったく……

あーー、私が悪かったよ、ごめんなさい、もうしません。

これでいいのかい?」

「うわーーーん! どうして謝るんですか! 私の夢の話なのにー!」

「どうしろっていうのさ! いつにも増して訳が分からないよ!?」

「うわーーーーん! ナズーリンのばかぁ! さいてーでーす!」

「付き合いきれないな」

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「私の番だよね?」

しゃくりあげ始めたご主人の膝にまたがり、驚くその頬に両手を添え、そっと唇を重ねる。

少しずつ場所をずらし、その都度軽く吸う。

上下の唇肉を細かく啄む。

唇の隙間に舌の先を差し込み、左右にそよがせる。

そして再び軽く吸う。

「ふぁぁっ」

焦点の定まらないご主人の目から涙が溢れだした。

「ナズーリン、上手です。

分かっていましたけど、経験豊富なんですよね。

そうかも知れないと思っていましたけど、上手すぎて悲しいです」

その涙を舐めとってから、もう一度口づける。

今度は少し強く吸い上げる。

吸い上げ、離す刹那に軽く唇肉を食む。

それを何度か繰り返す。

「いつか貴方とこうしたかったから、たくさん想起しただけだよ。

上手と言われれば嬉しいよ、努力が実ったのだから。

私の全霊を込めた接吻は、貴方に捧げたかった。願いが叶った」

「は、初めてだったんですか?!」

「私、ナズーリンのスイートミラクルキッスは貴方だけのものだよ」

気障を通り越してバカだな【スイートミラクルキッス】ってなによ?

自分で言っててなんだけど。

「はぐらかされたような気がしますけど」

ファーストキスだと言って欲しかったのかな?

そんなことを気にするなんて。

神の代理と見初められ、その在り方は、神が認めたほどの存在なのだ。

私なんぞを気にすることは無いのに。

こんなネズミに感けていたら、すべてを失ってしまうのに。

馬鹿だ、本当に馬鹿だ。

でも、この馬鹿を手放したくない、何があっても、何と引き換えでも。

ご主人、寅丸星、貴方のために私は在る。

貴方は輝く星。

その輝きのためなら、私はこの能力すべてを捧げる。

気が向いたら、少し構ってくれる程度で良かったのに、これほどの情愛をもらえるとは。

その想い、大きすぎて報いきれないよ。

分不相応の宝物だ。

この小さな手では抱えきれない。

私一人では守りきれないほど大きくて、広い。

それでも誰にも譲りたくない。

絶対に。

寅丸星、私のほとんどすべて。

毘沙門天の使いとして生を受けたが、今、この存在は、ちょっとうっかり、でも何に対しても一生懸命、不器用だけど無限の優しさと挫けない心を持った、このヒトのために在る。

そのヒトが私を【大好き】と言ってくれた。

私はこのヒトの【在りたいと願う生き方】を守る。

絶対に守る。

他者を貶めても、謀っても、滅してでも。

力は及ばずとも、この知力を振り絞り守り抜く。

良かった、本当に良かった。

長き生の意義が見出せた。

それも【そうだったら良いのに】と願っていた意義だ。

積年の鬱屈が弾け飛んだ。

なんと清清しい気分だ、怖いものは何も無くなった、迷いも無い。

今の私は、ご主人妄想モードの【スーパー・ナイス・ナズーリン】かもしれん。

博麗霊夢、八雲紫、八坂神奈子、八意永琳、風見幽香、まとめて片手で捻れそうだ。

ご主人の唇を堪能できた嬉しさゆえ、気分が高揚しすぎているな。

私もきちんと話さないとね。

「あーっと、ご主人の紹介ページには星がいくつあったかな?」

「白い星は五つ、黒い星は、書いてありませんでした」

間髪いれずの返答、気にはなっていたんだね。

「ご主人の黒い星は、書く必要がないんだ」

ご主人の眉根が寄る。

【必要ない】が面白くないんだね?

「私はずっと貴方を見てきのだ。

何故こんなにも愛おしいのだろう、と。

それを確認したくて他人も細かく見るようになった。

そして他人を見る度に貴方の魅力を強く認識できた。

ああ、やぱっりご主人だ、と震えがくるほどに、嬉しかった」

「えうっ、あ、あのそれって、貴方の【大事なひと】って、もしかして、もしかして、わ、私ですか!? 私でいいんですか!?」

ここまで言ってようやくか。

察しが悪いのは十分知っているつもりだったけど。

まぁ、いいさ。

「ご主人、正解だ。貴方だ、寅丸星だ」

俯いてしまったご主人。

涙が、ぱたぱたぱたぱたとその胸元に落ちる。

「あり、ありがとう、ございます」

先に礼を言われてしまったよ。

私こそありがとうなのに。

「良かった。本当に良かった。ナズの大事なひとが私で良かった。

大好きなナズが私を選んでくれて良かった」

涙は止まらない。

ご主人の頭を優しく抱いて、頬をくっつけ囁く。

「大好きなご主人。 星。 もう一度キスしていいよね?」

ご主人は小さく頷いた。

もう一度頬に手を添え、涙を舐め取り口づける。

一段落して唇を離す。

ご主人が潤んだ目を開ける。

微笑んでいた。

「ナズーリン、私たちは【好きあっている】のですから、その、恋人ってことで良いのですよね?」

おほ、いきなり恋人へ昇格か。

「寺の皆には言っておいたほうが良いのでしょうか?
でも、恥ずかしいですね。

どうしましょう?」

その照れながらの微笑、なんという威力だ。たまらない。

最高のトレジャーだ。

もう、我慢できん! 我慢しなくてもいいよね!?

跨ったまま、足を突っ張り、ご主人を押し倒す。

正座のままだから苦しいかも知れん、でも、止まらない!

「星! 星! このままいくよ! いかせてくれ!」

押し倒したものの、ご主人は私を抱えたまま、いとも容易く反転した。

体格と地力の差は如何ともし難い。

今はご主人が上だ。

跨っていた私はそのままひっくり返され、大開脚の大変な格好だ。

このままでは犯され放題だ。

ナズーリン、貞操ピーンチ! でも、でも、お望みなら好きにしていいよ。

そこにご主人の叱声。

「ですから! 体はまだ早いと思います!

これからも抱きしめあって、き、キスをしたいです!

でも、体は、ま、まだ、ですよ!?」

あ、私、覚悟を決めていたのに。

どんなに強引な行為でも受け入れるつもりだったのに。

なんというヘタレだ。

ちょっとがっかりだ、ちぇ。

「早いと言うと、いつからならよろしいのかな? 明日? 百年後?」

「どうしてそんなに極端なんですか!

だって、新しい下着も購いたいですし、もう少し痩せてからでないと、見っともないですし、と、とにかく今日はダメです!」

ははは、この人は自分の体に不満があるのか、なんという高い理想だ。

いや、こんなちょいとずれているところが可愛いんだよね。

私も可愛い格好をしたいしね。

次のお楽しみにとっておくかね。

私、ナズーリンとご主人、寅丸星、私たちのお楽しみはこれからだよね。

千年待った私たちだもの、少しは楽しんでいいはずだよね?

星、星、貴方が大好き。

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夢オチでした。

今回もロクでもない話でした。

毎度申し上げますが、これも一つの可能性、ちょっと具合の悪い星の悪夢ってことでご笑納下さい。

紅川がモデルではありませんし、経験を語っているわけでもありません(←んなのわかっとる!)。

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紅川寅丸

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