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ナズーリン! しっかりしてください!(1)

「ナズーリン、ナズーリン、起きてください」

ネズミの従者を揺すりますが、起きる気配がありません。

口を開けたまま、んかー、んかー、って。

ヨダレの跡がばっちりついていてカワイさ十分の一です。

毎朝このザマですからイヤになってきちゃいます。

大体従者が主人より寝坊助なんておかしくありませんか?

もう一度ゆさゆさゆさゆさ。

「朝ご飯の時間なんですよ、ナズーーーリーン!」

「うにゃうにゃうにゃ」

「もー、しっかりしてください! 今日はお仕事があるんでしょ?」

「ん〜おしごとお?」

ようやく目を開けましたが、まだ半眼です。

上半身を起こし、あむあむ言ってます。

「そうですよ! 早くご飯を食べて支度をしませんと」

「ん〜おしごとは〜だいじだよ〜ん」

「そうです! 大事ですよ! さあさあ早く、早く!」

両手を引いて立ち上がらせます。

髪の毛はボサボサ、寝間着はくしゃくしゃ、しまりのないどろんとした顔。

うー、あんまりカワイくありません。

「ふわぁぁああー」

奥歯まで見えそうな大口を開け、盛大なアクビ。

そして下履きに手を突っ込んでお尻をボリボリ掻いています。

もー、女の子なのになんですかこれ!

「ん〜〜ごしゅじ〜ん、おはよーさんで〜す」

「はいはい、おはようございます! 早く着替えてくださいな!」

「へ〜い」

のろのろと寝間着の上を脱いで、下を脱いで、下着も脱いで、って!

「なんで全部脱いじゃうんですか! お風呂じゃありませんよ!」

「ん〜すっきりするな〜 爽やかな朝だよね〜 ごしゅじ〜ん」

すっぽっんぽんのナズーリンがにへらーと笑い、大きく伸びをしています。

「そして、どうしてそのまま行こうとするんですか!?

なにか着てくださいよ!」

ナズーリンが今脱いだばかりの下穿きをつまみ上げました。

「くんくん、お、まだまだイケるな、これでいいや」

「待ちなさあい! その下着、何日穿いているんですか!?」

「ん? 三日? いや、四日かな〜?」

「うかー!! 下着は毎日換えなさーーい!」

「いやあ、お洗濯も大変だろうからさ〜気を使っているんだよ〜」

「屁理屈を言わなくて結構です!

アナタの小さな下着の一枚や二枚、どうということはありません!」

なんで私、このヒトの恋人なんでしょう?

「みなさ〜ん おはよーさんで〜す」

ようやく朝食の席につかせることが出来ました。

「ナズーリン、遅いよ! 盛りを減らすからね!」

一輪が怒っています、当たり前です。

「いや〜それは勘弁してよ〜」

ナズーリンは小さな身体ですがとてもたくさん食べるんです。

でも、ゆっくりしているものですから食べ終わるのがいつも最後です。

どろーんとした目で、口はもっそもっそ、もにゃもにゃ。

「ちゃっちゃと食べてよ! 片づかないじゃないか!」

また一輪に怒られています。

ようやく出発です。

今日は里で失せ物探しを頼まれているはずなんです。

心配なのでついて行くことにします。

これではどちらが従者か分かりませんよ。

ナズ、アナタなんでまっすぐ飛べないんですか?

どうして右へ右へと曲がっちゃうんですか?

具合悪いんですか?

あ、寝てるんですね!?

まったく、もー。

やっと里へ到着です。

えらく時間がかかっちゃいました。

これでは歩いていくのと変わらないじゃないですか!

「ねーごしゅじ〜ん、どこのお家だったっけ?」

「昨日の話、覚えていないんですか?」

「いや〜 ちょっとど忘れしちゃったんだよね〜」

「もー、しっかりしてくださいよ! キイチくんのお家でしょ!?」

「おー、そうだったそうだった、キイチキイチ、うんそうだ思い出した」

ホント大丈夫かしら?

キイチくんのお家を訊ねると壮年の男性が出迎えてくれました。

お父さんでしょうか。

「これはこれは寅丸さままでご足労いただき、すみません」

恐縮なさっています。

私は全然構わないのですがね。

「早速で恐れ入りますが、探していただきたいのは数珠なのです。

私の祖父の代から使われてきた大事な品なのですが、バカ息子がオモチャにしていたようでいつの間にかなくしてしまいました。

問いつめても一向に要領を得ません。

いつごろ、どこいらへんすらも覚えていないようなのです。

なんとかお願いいたします」

そう言って深々と頭を下げられました。

「まあまあ、それは大変です、代々伝わってきた大切な数珠なのですね。

でもご安心ください、ナズーリンがきっと探しあてるでしょう」

隣にいる自称ダウザーを見ますと、横を向いてアクビしていました。

もー!! ここは決めなくちゃいけない場面でしょ!?

「あれー? 忘れてきちゃったのかな?」

ナズ、アナタ、まさか。

「ロッド、置いてきちゃったな、あはは」

「あはは、で、すみますかーー!!

あれって、謂わばアナタの商売道具でしょ!? どうやったら忘れられるんですか!」

「ごしゅじ〜ん? 【商売道具】の宝塔なくしちゃうヒトに言われたくないな〜」

「うぐぐっ!」

い、痛いところ突いてきましたね。

「あれとこれとは別です!」

「そっかな〜? まぁいいや、今日はこれでやるか」

首から下げているペンデュラムを手にしました。

それは忘れていなかったんですね、良かった。

「ん〜と じゅず、じゅず、じゅ〜ず〜と」

ペンデュラムをぶらぶらさせてぶつぶつ言い始めました。

「東でもない、西でもない、北でもない、そして南でもな〜い」

「どういうことです?」

「つまり〜」

「つまり?」

「この世にはな〜い」

「そんなワケありますかー!!」

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